「親以上の存在」 夢破れた帝京長岡、2ゴールの主将MF川上が監督に感謝「心の底から…」
0-2から冷静な2ゴールで同点も…PK戦では1番手で失敗
第99回全国高校サッカー選手権は9日、埼玉スタジアムで準決勝が行われ、新潟県勢の悲願である初の決勝進出を目指した前回ベスト4の帝京長岡は、第88回大会王者の山梨学院(山梨)にPK戦で屈し、2大会続けて準決勝で姿を消した。
初戦の2回戦から準々決勝までの3試合で7得点。自慢のパスワークを発揮できないばかりか、山梨学院のグループ守備と頑強なフィジカル、執拗なプレスに遭って決定的な形を作れない。
前半開始20秒過ぎに先制点を奪われ、後半5分にも2点目を失った。ともに最も警戒すべき時間帯の失点となり、就任8年目の古沢徹監督は「遠いですね、決勝進出というのは」とため息をつき、「(前半の)立ち上がりとロングスロー、抑えられなかったのは私の責任。今大会は入り方の良くない試合が多かったのに、修正し切れなかったのも私の責任です」とファイトした選手をかばった。
しかし2点目を奪われたのが早い時間だったこともあり、1点を返せば戦況は一変する。そうして帝京長岡が攻勢に転じていた後半14分、流れるようなパスを通わせてまず1点。MF廣井蘭人の縦パスを左で受けたFW葛岡孝大がヘッドで落とし、主将のボランチ川上航立が角度のないところからGKの頭上を破った。
同33分には、ペナルティーエリアに侵入した廣井が倒されてPKを獲得。前回大会もアンカーとして4強を経験した川上が、とても高校生とは思えない沈着冷静なキックを沈めて同点。GKが右に跳ぶのを見極めた末、チップキックのような高度な技術でゴール中央にそっと決める心憎い技を披露したのだ。
後半は10本のシュートをお見舞いした帝京長岡が主導権を握り、2-2のままPK戦に突入した。
しかし、あれだけ見事な同点PKを流し込んだ1番手の川上が、今度は左に蹴ったコースを読まれて失敗。続く2番目の葛岡、4人目のMF鉾修平も外してしまい、90分ではほぼ互角の内容ながら勝負に負けた。
失敗したのは全員3年生。準決勝の先発メンバーは1年生が4人で、2年生が3人、3年生は4人だけという若い陣容だった。前回ベスト4のメンバーも川上とFW酒匂駿太の2人だけ。
古沢監督は「去年の経験者が少ないなか、3年生が頑張ってくれて勇気づけられた。川上はチームのシンボルで、下級生に声をかけて引っ張ってくれました。感謝したい」とJリーグのガンバ大阪門真ジュニアユース出身で、関西から新潟にやってきた攻守の大黒柱に賛辞を贈った。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。