元日本代表の“名ボランチ”が遠藤航を称賛 ドイツで「洗練されてきた」プレーとは?
現代表で“不動のボランチ”に成長、遠藤のプレーを福西崇史氏が分析
まさに圧倒的なパフォーマンスだった。2020年11月13日にオーストリアのグラーツで行われたパナマ戦(1-0)、日本代表は前半を0-0で折り返すと、森保一監督は後半開始からMF遠藤航(シュツットガルト)を投入。2ボランチの一角としてプレーすると、それまで低調だったチームを劇的に変えた。
的確なポジショニングと球際の強さを発揮して次々と相手の攻撃の芽を摘むと、後半16分には鋭い縦パスをMF久保建英(ビジャレアル)に通し、最後はMF南野拓実(リバプール)が倒されてPKを獲得。遠藤の1本の縦パスから、この試合唯一のゴールが生まれた。シュツットガルト在籍2年目、ブンデスリーガでも結果を残す遠藤はボランチとして何が優れているのか。現役時代に「Jリーグ史上最強」と言われる黄金時代のジュビロ磐田でプレーし、日本代表として2度のワールドカップを経験した福西崇史氏に、遠藤のプレーを分析してもらった。
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歴代の日本代表を振り返っても、複数ポジションをこなす守備のユーティリティープレーヤーは各時代で輝きを放っていた。中西永輔、中田浩二、阿部勇樹、今野泰幸などは当時の指揮官から重宝されてきたが、A代表に初招集された頃の遠藤もそうした系譜を受け継ぐ1人と見られていた。
1993年生まれの遠藤は、リオデジャネイロ五輪世代の中心メンバーとして各年代別代表で活躍。ボランチの主力として、2016年リオ五輪本大会にも出場している。
一方、クラブでは10年に湘南ベルマーレのユースからトップチームに昇格すると、守備力と展開力を兼ね備えた選手として3バックの一角として台頭。16年からプレーした浦和レッズでも最終ラインでの起用が多かったが、18年夏にベルギー1部のシント=トロイデンに移籍してからはボランチとしてコンスタントに出場した。そして同時期に日本代表監督に就任した森保監督の下でも、中盤の底で起用され続けている。
万能型の選手から不動のボランチへ――。福西氏も現在の遠藤の充実ぶりについて、シント=トロイデンへの移籍が大きかったと語る。
「ベルギーに行ってから、浦和では(最終ラインに)下がったりしていたのでボランチを思い出してきたのかなと。その後にドイツへ行って激しさ、守備の粘り強さ、そしてより良くなったと思うのが攻撃のつなぎの部分ですね。攻撃に対して良いところで出られるようになり、攻守両方において存在感が出てきたなというのが成長した部分だと思います」
後半開始から出場し、試合の流れを一変させたパナマ戦では、特にビルドアップ時のポジショニングの良さが光っていたという。
「(選手間の)距離が離れれば離れるだけ、ボールが動いている間に相手も対処できるので、そこでワンテンポ、遠藤が間にパッと入ったことで、相手が迷ってしまい、狙いが定まらなくなる。そうなるとパスを出すほうも選択肢が増えるし、中盤から前の選手にしても距離感が近くなって、ボールを貰いやすくなる。遠藤が上手くポジショニングしたなと思います」