東福岡の“ヘディング職人”、PK戦の予感漂うなかで決まった「百発百中」決勝弾の舞台裏
残り3分で投入されたDF竹内良が大仕事をやってのける
「なんだ、また延長戦かよー」。
ゴール裏で写真を撮影していた筆者の隣に座っていたベテランが思わず声を上げた。2日に行われた第99回全国高校サッカー選手権2回戦の東福岡(福岡)と作陽(岡山)の一戦は、後半40分を過ぎて1-1のスコアだった。作陽は1回戦の星稜戦もPK戦にもつれる熱戦を繰り広げており、このまま試合が終われば数分後にはPK戦が始まるはずだった。
その声がピッチ上の選手に聞こえたかどうかは不明だが、試合を見ていた多くの人たちも、PK戦での決着を予想していたはずだ。東福岡の森重潤也監督も、アディショナルタイムにPK戦への布石を打っている。先発のGK原勇輝をベンチに下げ、PK戦に向けてGK神田翔太朗を送り込んだ。
選手たちの脳裏に、PK戦がちらついても無理がない状況でも、東福岡の選手のなかにはアディショナルタイムで決着をつけることを狙っている選手がいた。1-1で迎えた後半36分、作陽がPKを失敗した直後に途中出場したDF竹内良だった。セットプレーのこぼれ球からの2次攻撃で、MF岩井琢朗がつないだボールに竹内が頭で合わせる。緩やかな放物線を描いたボールは、少し前に出ていた相手GKの頭上を越えていき、ゴールネットを揺らした。
森重監督は、スピードのある竹内を送り出す際に「しっかり守り、チャンスがあれば攻撃参加をしなさい」と伝えていたという。そして、「短い時間でも結果を残そうと試合に入った」という竹内には、チャンスで決められる自信があった。「日々の練習でも、セットプレーをやる時は百発百中くらいの感じで入るので、それを意識しながら試合に入って」いた。
練習だけではない。スーパープリンスリーグ九州第4節の大分U-18戦(2-1)でも、竹内は後半アディショナルタイムに決勝のヘディングシュートを決め、チームに勝利をもたらしていた。この日のゴールは、公式戦ではその時以来だったというが、キャプテンの上田瑞季も「竹内は練習からああいうところで常に決めていた。『職人』と言われているくらい、ヘディングがうまい。(チームが)セットプレーで点を取れていなかったから、練習も増やしていた。最後はこぼれ球だったけど、決めてくれてよかった」と、竹内のヘディングと勝負強さに賭けていたことを明かした。
正GKの交代によって、PK戦突入の雰囲気が会場に漂ったなか、終了間際に決勝ゴールを奪った東福岡。作陽も試合再開後にパワープレーから同点ゴールを目指したものの、GK神田にハイボールをしっかり抑えられて反撃は及ばず。最後まで集中を切らさず、これまでの取り組みの成果を出せた東福岡が名門対決を制し、3回戦へと駒を進めた。
(FOOTBALL ZONE編集部)(河合 拓 / Taku Kawai)