初戦で“九死に一生”…昌平が漂わせた優勝候補の風格 “10番”須藤「僕らは勝たないといけない」

攻撃の大黒柱にも染みつく守備意識の高さ「絶対に点を取らせたくなかった」

 1回戦で6点を挙げた京都橘はリスタートが得意だ。J1に昇格した徳島ヴォルティスに加入内定のエースFW西野太陽と、FW木原励の決定力は脅威の的で、DF金沢一矢の“遠投”にも細心の注意が必要だった。

 後半28分には西野に強シュートを打たれたが、DF唐木晃が素早く体を寄せてブロック。同32分には金沢の左ロングスローを起点に、DF小山凌がポストをかすめる際どい一撃を放った。

 しかし危なっかしい場面はこの2度ほどで、昌平は前線、中盤からの厳しいプレスや複数での囲い込みという守備の持ち味も存分に発揮した。須藤は「強烈な2トップにやらせないようにした。自分も相手のウイングバックとの駆け引きができた」と攻撃の大黒柱でさえ、高い守備意識が染み込んでいるのが昌平の強みだ。

 小見も京都橘の2トップへライバル心をたぎらせ、得点源であるセットプレーになると体を張った守りを見せていた。「僕は木原くんをマークしていましたが、あの2トップには絶対に点を取らせたくなかった」との思いで守備に回っていたそうだ。

 前半23分に須藤がGKと1対1になりそうな場面で切り返してしまい、チャンスをつぶした。小見は2-0の同28分、縦パスに反応して出てきたGKもかわし、無人のゴールに打ち込んだが、左に外して頭を抱える。藤島監督は「決め切るところで決められなかったのは反省点」としたが、チームは埼玉県予選も試合を重ねるごとに洗練されていった。3回戦はさらに質の高い内容になる期待が膨らむ。

「1回戦であんなにいい試合をしてくれた高川学園さんのためにも、僕らは勝たないといけない」

 須藤は恩返しができた思いとともに、これから先の戦いにさらなる闘志をにじませたことだろう。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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