昌平の危機を救った“篠田兄弟” 殊勲の兄・大輝が誓う野望「サッカー王国・埼玉を復活させたい」

昌平の勝利に貢献した兄のMF篠田大輝(9番)と弟の篠田翼(19番)【写真:河合 拓】
昌平の勝利に貢献した兄のMF篠田大輝(9番)と弟の篠田翼(19番)【写真:河合 拓】

1回戦で高川学園に2点ビハインドの劣勢も、篠田兄弟の活躍で追いついてPK戦の末勝利

 前回ベスト8で、今大会も青森山田(青森)とともに優勝候補に推される昌平(埼玉)が、第99回全国高校サッカー選手権大会1回戦に登場。2点差を追い付きPK戦で高川学園(山口)を辛くも退けた。

 相手の2倍以上にあたる14本のシュートを放ちながらも、昌平は大苦戦した。

 前半7分にFKから先制され、後半29分にはカウンターから2点目を奪われ、絶体絶命の瀬戸際に追い込まれていた。後半39分を迎えても無得点で2点差。藤島崇之監督は「最後まであきらめていませんでした」と、指揮官としては当たり前の言葉を放ったが、正直な胸の内はかなりの焦りを感じていたのではないか。

 そんなチームの危機を救ったのが、2年生MF大輝と1年生MF翼の篠田兄弟だった。まず後半26分に兄が途中出場し、その4分後に弟が送り込まれた。

 後半40分、司令塔の須藤直輝が中央からドリブルで運ぶと、右サイドに進出していた翼に最終パスが届いた。そのまま右足を振り抜き、ゴール左隅に反撃の狼煙となる1点目を決めた。

 翼は今大会の埼玉県予選では、初戦の3回戦から決勝までの4試合で1度も出場していなかった。そんな1年生が大舞台で、しかも敗戦と背中合わせの戦況に登場してゴールを奪うのだから、このあたりは兄譲りなのかもしれない。

 大輝は前回大会、国學院久我山(東京B)との3回戦で同じく後半途中から出場し、アディショナルタイムに左足で豪快な決勝シュートを蹴り込んでいるのだ。

 今度も試合の大団円で大仕事をやってのけた。アディショナルタイムは3分だが、時計の針は5分近くになっていた左サイドでの直接FK。須藤の蹴ったボールに誰よりも早く先んじてヘッドで合わせた。「もう位置取りとかなんとか考えず、ボールが来るのを信じて前に出ました」としてやったりの表情だ。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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