「第2の三笘」は生まれるのか? 筑波大恩師・小井土監督に訊くタレント育成論

今シーズン大きな注目を集めた川崎フロンターレMF三笘薫【写真:Getty Images】
今シーズン大きな注目を集めた川崎フロンターレMF三笘薫【写真:Getty Images】

筑波大蹴球部・小井土監督が三笘の大学時代を回想 「いい加減に取り組む感じはまったくなかった」

 今季のJ1リーグを制した川崎フロンターレで、大卒ルーキーの三笘薫が目覚ましい活躍を見せた。プロ1年目にして新人最多タイ得点記録となる13得点をマーク。大ブレイクを受け大学サッカー界の育成力に注目が集まるなか、筑波大蹴球部で三笘を指導した小井土正亮監督にタレントの育成論について話を訊いた。

 現在23歳の三笘は川崎の下部組織出身。高校卒業時、ユースからトップチームへの昇格も打診されたが、本人が時期尚早と判断し筑波大への進学を選択した。大学ではもともとの武器であるドリブルを駆使して成長を遂げ、大学3年次の2018年7月に20年シーズンからの川崎入りが内定。今季開幕戦(サガン鳥栖戦/0-0)でJ1デビューを飾ると、第7節湘南ベルマーレ戦(3-1)でプロ初ゴールをマークした。その後は、破竹の勢いで得点とアシストを量産。渡邉千真(09年/現・ガンバ大阪)、武藤嘉紀(14年/現・エイバル)が記録した新人最多得点に並ぶ13ゴールをマークするなど、多彩なタレントが揃う川崎においてシーズンを通して存在感を放った。

 三笘の活躍について、筑波大時代に4年間指導に当たった小井土監督は「点を取るところ以外はそれほど驚きではなかった」と話す。大学入学時点で三笘の才能は図抜けていたといい、他の選手と比べてタレントの質では一枚も二枚も違うと見せつけていた。小井土監督は、当時の三笘をこう振り返る。「周りより多少上手いだけで、サッカーに対していい加減に取り組むという感じはまったくなく、まだ成熟していないというか、トップのコンペティションでやれるだけの経験が足りなかっただけなので、勝ったり負けたりしながら、時には厳しいことも言われたりしながら、成長していったなと感じますね」

 当初はムラがあったプレーも、学年が上がるにつれて改善。プロは結果がすべての世界だと、小井土監督から日々説かれていたこともあり、自覚も芽生えた。天性の才能と大学4年間で磨かれた心身が合わさり、プロの舞台で羽ばたいた三笘。小井土監督は「彼なりのペースで着実に成長した結果」だと見ている。

「大学の時はもっと多くのタスクをこなさなきゃいけなかった。後ろで守備も頑張らなきゃいけない。もちろん今も頑張っているとは思いますけど、ゲームを作るところ、ボールを前に運ぶところ、全部大学ではやらなきゃいけなかったのを、川崎ではアタッキングサードでの崩しのところだけパワーを使えている状況なので、そういう意味で良さを存分に引き出させてもらっているなっていうのはありますよね。チームメートに助けられていて、フロンターレのチームスタイルが彼に合っているとも思うし、周りに活かされているなっていうのが率直な印象です」

 三笘が図抜けていたのはサッカーの技術だけではなかった。小井土監督が特徴の一つとして挙げたのが考え、実行する力だ。大学で指導にあたった頃、三笘はすでに成功へのイメージを思い描き、自らに足りないものを常に考えられるパーソナリティーの持ち主だった。2005年から6年間、清水エスパルスのアシスタントコーチを務めた経歴もある小井土監督は、当時所属していた岡崎慎司(ウエスカ)と重ね合わせながら振り返る。

「自分は絶対にこうなるっていう信じる力に関して言うと、岡崎選手は本当に素晴らしいなって思うし、三笘も『こいつはどうなっていくかな』って外から見ている分には思っていましたけど、気づいたら自分なりの一番良い形で成長していったので、描いていたと思うんですよね、『こうなりたい』っていう姿を。そこに向かって着実に成長したという意味では、共通しているところかもしれません」

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