乱立する3つの「世界一」の称号 最も権威あるバロンドール、一番信用できる賞は?
レバンドフスキがFIFA&UEFAの年間最優秀選手賞をダブル受賞
ロベルト・レバンドフスキがFIFA年間最優秀選手賞に選出された。まあ順当だと思う。リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドのどちらかが選ばれる時代が、ようやく終わったのだろう。
サッカーの個人賞は「フランス・フットボール」誌が選出するバロンドールが知られているが、こちらは新型コロナウイルスの影響で2020年は表彰していない。国内リーグを消化していない国もあったので、公平ではないという判断だという。
現在、「世界一」のプレーヤーを表彰する賞は3つある。
1956年にスタートしたバロンドールは、もともと欧州年間最優秀選手賞だった。95年に欧州クラブに所属していれば国籍を問わないことになり、この年にはリベリア人のジョージ・ウェアが受賞している。2007年からは所属クラブが全世界に拡大され、名実ともに世界一の選手を選出することになった。ただし、欧州クラブ所属以外の選手が受賞したことは今のところない。
FIFA年間最優秀選手賞は1991年にスタート。バロンドールが記者投票なのに対して、FIFAのほうは代表監督とキャプテンが投票する方式である。もちろん、対象はFIFA加盟国すべての選手だ。
ややこしいのは、バロンドールとFIFA年間最優秀選手賞が2010年に合体してFIFAバロンドールになっていた時期が6年間あること。さらにFIFAバロンドールがスタートした翌年には、UEFAがUEFA欧州年間最優秀選手賞を立ち上げた。こちらはUEFA(欧州)のクラブに所属する選手が対象なので、受賞資格者は以前のバロンドールと同じである。ただ、選出方法が少し違っていて、記者投票にUEFAチャンピオンズリーグ(CL)とヨーロッパリーグ(EL)に参加したクラブの監督が投票するというもの。
2016年にバロンドールとFIFAが別れたので、現在は3つの賞が存在している。では、どの賞が一番信用できるのか。
最も権威があるのは、最も歴史のあるバロンドールだろう。ところが、バロンドールには古くから疑問の声がついて回っている。投票権のある記者はフランス語がマストだったのだ。フランスの雑誌が主催しているから当然とも言えるが、中にはフランス語はできてもサッカーにはまるで詳しくない記者も混ざっていた。そのせいかどうか分からないが、バロンドールは時々選出すべき選手を間違えている。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。