「なぜだ!」 怒りをぶちまけたフンメルス、低調ドルトムントが繰り返す“初歩的ミス”
12月は公式戦6試合でわずかに2勝、失点「11」
1失点目のシーンもそうだ。MFジョヴァンニ・レイナが相手FWタイウォ・アウォニイに振り切られて失点。マンマークで守っている以上、最低限シュートを打たせないようにするのは鉄則だが、あまりにもあっさりとやられている。そもそも、なぜレイナがマーク役なのかも分からない。自分たちでマンマークに強い選手を、危険な相手選手につけるという約束事さえないのか。
セットプレーにおける守り方の数多くのバリエーションがあるわけではない。基本的には完全マンツーマンか、完全ゾーンディフェンスか、マンツーマンとゾーンの併用の3種類だ。どんなやり方を取ったとしても、ゴール前の一番危険なエリアを空けないこと、ヘディングに強い相手選手を特に注意することは鉄則だ。
ドイツにおけるプロスポーツのトップレベルに位置づけられているドルトムントの選手が、まるでアマチュアチームのようにセットプレーから失点を喫していると指摘するドイツメディアもあるが、いや、そうした言い方はアマチュアチームの選手に失礼でさえある。彼らのほうがちゃんと守る。マークの確認をせずに、セットプレーで守るなんてことはないのだから。
ドルトムントがセットプレーからの失点で試合を落としたのは、今回だけではない。第9節ケルン戦(1-2)でも、全く同じようなパターンで失点している。ニアポストの選手がヘディングで後ろにそらして、ファーポストで詰めるというのは、真新しい革新的なやり方ではないはずだ。
「ニアポストへ送られる正確で鋭いボールを守るのは難しいこともある。だからこそ、その次のボールをしっかりと跳ね返すことが必要だ」
フンメルスはそう語っていたが、この日もセットプレー時にはそのセカンドボールが来るだろうところがポッカリ。スペースを埋められない、人にはついていかないでは守れるものも守れない。
シーズン13試合ですでに5敗。ケルンに1-2で敗れた後の12月は、公式戦6試合でわずかに2勝、失点「11」は多すぎる。22日のDFBポカール2回戦で2部ブラウンシュヴァイクと対戦するが、早急に基本的な攻守における原則とチームにおける決まりごとを再整理しなければならない。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。