「なぜだ!」 怒りをぶちまけたフンメルス、低調ドルトムントが繰り返す“初歩的ミス”

試合後に怒りをぶちまけたドルトムントDFフンメルス【写真:AP】
試合後に怒りをぶちまけたドルトムントDFフンメルス【写真:AP】

【ドイツ発コラム】激震のドルトムント、監督交代後も続くセットプレーでの脆さ

 沸騰する怒りを抑えることができない。試合後のインタビューへ向かうDFマッツ・フンメルスは、思わず後ろの広告アクリルボードに拳を叩きつけていた。

 頭をよぎるのは「なぜだ!」の連続だろうか。

 ルシアン・ファブレ監督の解任後、エディン・ テルジッチ新監督のデビュー戦となった第12節ブレーメン戦では、苦戦しながらなんとか2-1で勝利したことで、チームとしての結束が固まり、ここから上昇気流に乗っていけると信じていたはず。だが翌節、MF遠藤渓太が所属するウニオン・ベルリンとの対戦で、ドルトムントは1-2で敗れた。失点はどちらもCKから。それもあまりにあっさりとやられている。フンメルスが特に激高しているシーンは2失点目について。

 右サイドからのCKがゴール前に送られると、そこにドルトムントの選手が誰もいない。フンメルスは所定の位置からボールに向かうが届かない。その後ろでウニオンのDFマーヴィン・フリードリッヒが悠々と空高く飛び上がり、ゴール右へ強烈なヘディングシュートを叩き込んだ。

「フリードリヒをマークすべきだった選手は誰だったんだ?」とドルトムント選手が怪訝な顔をして周りを見るが、それさえも曖昧なくらいの雰囲気で守っていたのか。映像で見直してみると、MFエムレ・ジャンとDFマヌエル・アカンジがフリードリヒのマーク役をそれぞれ担当していたようだが、どちらがどっちにつくかのやり取りが明らかではないのが見て取れる。結局2人とも、走り込むDFロビン・クノッヘにつられて、フリードリヒに道を譲ってしまった。

「受け入れられない。なぜ相手チームの最もヘディングが強く、ここまで何度もセットプレーから得点している選手が、マンマークで守っていたのにゴール前で完全にフリーなんだ!! 許されることではない」

 フンメルスは怒りをぶちまけた。

 サッカーはいつでも、ミスと隣り合わせのスポーツだ。誰だって、どこだって、いつだって、ミスは起こりうるもの。だからといって、あらかじめ取り決められていたことでミスをするのはいただけない。それも初歩的なミスを繰り返しているのだから。

 テルジッチ監督は「試合前には入念に確認をして、どこに立ち、どのように守るのかを説明したのだが」と説明していたが、そうしたレベル以前のミスと言わざるをえない。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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