アギーレジャパンのマエストロ候補、柴崎岳 遠藤保仁を超えられるか
アギーレスタイルの核となるポジション
アギーレ監督は5日のウルグアイ戦、ベネズエラ戦で4‐1‐2‐3システムを一貫して試している。このシステムの利点は、攻撃時にFW3枚+中央のMF2枚で厚みのある攻めを行うことができ、かつ、守備時に中央のMF2枚がアンカーと横並びにドロップすることで、MF3枚+DF4枚、計7人という人数をかけた守備網を敷くことができる点にある。
現在、この4‐1‐2‐3システムを主軸としているのがスペイン名門レアル・マドリードだ。展開力あるドイツ代表MFトニ・クロースを中盤の底に置き、中央のMFハメス・ロドリゲスとMFルカ・モドリッチが攻守にわたり動き回る。各々の役割が非常に明確になっている。
しかし、デメリットもある。攻守共にキーとなるのが中央の2枚。ひとたびチームが守勢に回ったときに、ロドリゲスとモドリッチのカバーリングが遅れれば、このシステムは一気に弱点を露呈する。
中盤の底、いわゆるアンカーの両脇のスペースが空洞化し、相手に高い位置で前を向かれるケースが増える。当然、シュートコースも生じ、失点のリスクは高まることになる。
前線でボールを巧みにキープできる柴崎の存在は、攻撃面において非常に重要なものとなってくるだろう。しかし、守備面でのポジショニングとカバーリングという課題を克服できなければ、日本代表の先発の座の定着は高き壁のままかもしれない。
柴崎は所属する鹿島でボランチを任されるようになってから、同じように守備面での課題を抱えていた。しかしその後、守備陣とコミュニケーションを取りながら、その弱点を克服してきた経緯がある。そして今では大きな綻びを見せないまでに成長した。
ただ、アギーレジャパンの戦術は2ボランチの鹿島とは異なる。また選手らによると、アギーレ監督自身はまだ、そこまで細かい指示を与えていないようだ。その面では柴崎は代表チームの戦術に適応する難しさを感じているのかもしれない。
遠藤が何年も守り続けてきた立ち位置を奪うことはそう容易くはないだろう。だが現段階で、柴崎が遠藤の後継者候補であることは間違いない。アギーレ監督の採用する4‐1‐2‐3システムにおいて核となるのはセントラルミッドフィルダーの2枚であり、いわばチームの心臓だ。柴崎はアギーレジャパンの命運を握る候補の1人と言える。
「背番号7のプレッシャーはなかった。歴代の選手が代表で長くつけている番号であるのは知っているし、個人としては意識せずにできたと思う」
ベネズエラ戦後にそう口にした柴崎。近年の日本代表の生命線となってきた背番号7に袖を通す22歳の今後の成長に期待したい。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web