“岡田メソッド”との親和性 スペイン1部も指揮、FC今治リュイス監督が日本に来た理由
スペインのほうが日本よりも顕著、幼少期からの「勝つため」のマインド
――リュイス監督の言う「勝つ」「コンペティティブ」という部分では、日本でも以前はU-12の年代から全国大会を目指す、ないしは全国大会で「勝つことを求められる」傾向がありました。スペインの育成年代は現在、どんな傾向がありますか?
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「スペインと日本との育成年代の最も大きな違いは、『コンペティティブにやっているかどうか』。すなわち『勝敗を求められているかどうか』です。スペインでは10歳の段階からすべての年代でリーグ戦が用意され、そこで毎週末に勝ちにこだわった戦いが繰り広げられています。さらに、リーガの1部・2部クラブはすべてこのジュニア年代からチームを持っていて、『週末の試合に勝つためにどうするか』という視点でトレーニングが行われています。ここは日本との大きな違いだと思います」
――日本では近年、ジュニア年代は勝敗だけにこだわらず技術などを鍛えていく方向性になりつつありますが、そこもスペインとは真逆というわけですね?
「もちろん技術を高めていくことも大事ですし、『勝ち負けのある試合』が一番必要というわけではありませんが、週末のコンペティティブな試合に向けてトレーニングを積んでいくことも私は大事だと考えています。サッカーにおける試合の結果というものは、『勝つ』か『引き分け』か『負け』しかありません。ジュニア年代から、その部分にこだわっていくことは必要なことだと思いますね」
――裏を返せば、「勝つために何をするか」という習慣をジュニア年代の指導から積み重ねていけば、トップチームでも闘えるメンタルやスキルを身に付けられるということでしょうか?
「そうですね。ジュニア年代から勝ち、負け、引き分けを経験することで選手たちは成長していく。その部分は確かに必要だと思っています。ただ、このシステムには同時にネガティブな要素もあります。勝つことばかりに集中しすぎて、多くの選手がサッカーを辞めている状況があります」
――なかなかコロナ禍の状況なので難しかったと思いますが、今年、日本の育成年代サッカーをご覧になったことはあるのですか?
「今年はFC今治の育成年代の練習は何回か見ましたし、何試合か実際に見ました。もちろん、私が育成年代の状況を評価できる立場ではありませんが、育成アカデミーダイレクターや指導者たちには私がスペインで経験したことは話しています」
――ちなみに、日本には「高校サッカー」という独特のシステムも存在します。
「高校サッカーはスペインにはありませんが(笑)、素晴らしいシステムだと思います。高校にいる選手にも能力が高い選手がいますし、その中にはスペインの1部・2部のアカデミー組織に入れる実力を有しています。ですので、日本は高校サッカーがあったり、ユースサッカーがあったり、という複数の道があることによって、スペインとは異なるプロになるための複数の道が用意されている。そこは良い部分だと思います」
(後編に続く)
[PROFILE]
リュイス・プラナグマ・ラモス
1980年10月25日生まれ。スペイン・バルセロナ出身。1999年にエスパニョール(当時1部・現2部)のアカデミー監督として指導者のキャリアをスタートさせた。その後、ビジャレアルのCチーム・Bチーム、エスパニョールBチーム、グラナダBチームの監督を歴任。2016年にはグラナダのトップチームで暫定監督として“ラ・リーガデビュー”も飾った。UCAMムルシア、エルクレスを経て、今季よりJ3のFC今治で指揮を執る。
(寺下友徳 / Terashita Tomonori)