「チグハグ」な清水が最下位転落 クラブ史上“最悪のシーズン”回避へ…意地を見せられるか

平岡監督の“清水愛”は就任1カ月半で伝わったはずだが…

 今シーズンの清水を象徴するような試合だった。相手のストロングポイントである警戒していたプレーからの失点。ゴール前であと一歩が寄せ切れない失点。そして新監督となって好調になった要因を、「簡単な失点が減った」と話していた大久保だったのだが……。特に前半はミスが多く、ボールが前に進まない「以前のサッカー」に戻ってしまっていた印象で、「チグハグだった」と試合後に話した平岡監督の言葉がまさに当てはまる内容だった。

 この試合ではFWカルリーニョス・ジュニオとMFヘナト・アウグストの負傷による欠場が響いたが、代わりに出場した選手にはそのブラジル人選手とは違う、自分の持ち味を出して来年につなげるものを見せてほしかった。平岡監督も試合後のエンディングセレモニーで、「まだまだ彼らはできる。そのポテンシャルがあると信じている」と声のトーンを一段強めて、寒風吹き抜けるスタンドに残ってくれたサポーターと選手たちに訴えた。

 来シーズンの現場の陣容はまだ発表はないが、試合終了後に飯田淳平主審から警告を受けるほど選手とともに闘うこの熱い指揮官の“清水愛”は、この1カ月半で選手にもサポーターにも伝わったことだろう。最終節は天皇杯と来季AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場を決めた2位ガンバ大阪との対戦。勝利すれば最下位を脱出し、16位でフィニッシュする可能性もある。「開幕5連敗」「シーズン最多失点」とクラブワースト記録を更新するシーズンとなったが、最後の意地を見せてくれるだろう。

 最後に医療従事者の方々、そしてJリーグに関わるすべての方々の努力により、今シーズンもここまで来たことに対して敬意と感謝をしつつ、来シーズンは少しでもコロナ禍前の日常の取材が可能となり、「強いエスパルス」の復活をサポーターとともに間近で観察できるようになっていることを切に願っている。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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