「下がらないと上手くいかない」 浦和FW興梠、“苦心”の末に到達した9季連続二桁ゴールの舞台裏
川崎戦で先制PKを奪取、今季リーグ戦通算10得点にたどり着く
浦和レッズのFW興梠慎三は、16日の川崎フロンターレ戦(1-3)での先制ゴールで2012年から続くリーグ戦の二桁ゴール記録を伸ばした。9シーズン連続のリーグ戦二桁ゴールを達成した万能型ストライカーは「浦和レッズでFWとして出ている以上、最低限二桁は取らないといけない」と、そのプライドを言葉にした。
【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから
興梠は12年に当時所属の鹿島アントラーズで二桁ゴールを決めた後、13年に浦和へと移籍した。浦和加入後はミハイロ・ペトロヴィッチ監督(当時)の作り上げる攻撃的なサッカーの1トップとして君臨。縦パスを受けてポイントとなるプレーはそれまでのイメージを大きく変え、コンビネーション良し、クロスへの飛び込み良し、背後への抜け出し良しと、多彩なパターンでゴールを量産してきた。
それでも本人は「1人で打開してゴールを決めるタイプではなく、誰かがアシストしてくれることでゴールを奪えるので、そういう意味でチームメートには感謝しています」と話す。17年夏でペトロヴィッチ監督がチームを去り、システムが2トップになっても、クロスが攻撃の主なパターンになっても、常にゴールを重ねてきた。
ただ、今季に関しては記録が途絶える大きなピンチだった。大槻毅監督はプレシーズンから慣れ親しんだ3バックではなく4バックに変更。世代交代も含めたチームの過渡期にあるチームは、攻撃の機能性は大きく下がった。長年、興梠のアシスト役の筆頭だったMF柏木陽介も、負傷で大半を欠場した昨季に続きプレータイムが少なかった。新加入のFWレオナルドはゴール前に特化したタイプで、興梠は下がってボールを受ける場面が増えた。
シーズン中には「自分が下がらないと組み立てが上手くいかない」と話し、チームを機能させるために苦心した。しかし、それらすべての要素は得点を奪うという観点からはマイナス要素しかない。そうしたなか、10月14日の柏レイソル戦(1-1)から11月3日のサンフレッチェ広島戦(1-1)までの5試合で5ゴールを奪取。通算9ゴールまでたどり着いていたものの、前節まで5試合連続ノーゴールだった。
記録へのプレッシャーもかかってきたこの日、記録的な独走で優勝を果たした王者・川崎を相手にチームは前半のうちにPKを獲得。そのキッカーを務めた興梠は、GKチョン・ソンリョンの逆を突いてゴール左へ冷静に決めた。このゴールに「PKを任されることが多い中で、チームのために確実に仕留めるということでは冷静に決められてすごくうれしい思いはありますね」と話すエースだが、クラブの将来を考えての思いもあると話す。
「昔は阿部(勇樹)ちゃんがPKを蹴っていて、若い僕に託されて、自分ももう若い人に託す番だと思っていて。武田に蹴らせようと思いましたけど、そこで外したことを考えたら、あいつに責任が重くのし掛かると思って避けました」