今季ACL組にとって「公平性を欠く」Jリーグ日程 「出場権獲得プレーオフ」導入も一案
【識者コラム】コロナ禍で過密日程を強いられた3チーム、ACLで揃って16強に進出し実力を証明
川崎フロンターレが独走したJ1リーグでは、来年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権の行方もほぼ見えてきた。
現在2位につけるガンバ大阪は、すでに4位以内を確定。3位の名古屋グランパスも現状下位チームとのホームゲームを2つ残しており有力だ。それに対し4位につけるセレッソ大阪は上位陣では唯一3試合を残しているが、厳しい対戦相手ばかりで予断は許さない。もし5位につける鹿島アントラーズが逆転への道を切り拓くなら、最終節で直接C大阪を叩くことが絶対条件になる。
今年はJ1から天皇杯に出場するには2位以内が条件になっているので、前述の5チーム以外が来年のACLに出場することはない。つまり来年はJリーグを代表してアジア王座に挑む顔ぶれが、すべて入れ替わることになる。
だがJクラブが本当にアジア王者を狙うなら、改めて出場選考を見直すべきなのかもしれない。今年はコロナ禍の影響でACL出場組の過密日程に拍車がかかり、国内リーグではほぼ全滅となった。昨年王者の横浜F・マリノスを指揮するアンジェ・ポステコグルー監督が「この不公平なスケジュールでは、とても強度の高いゲームなどできない」と嘆いたように、とりわけ真の力関係を炙り出すには、あまりに公平性を欠いた。
もちろん、この状況なので無事開催できただけでも成功という見方もある。しかし今年のACL出場組がJリーグ代表に相応しい実力を備えていたことは、皮肉にも3チームすべてがグループステージを突破したことでも証明された。
実際、横浜FMはJリーグも後半戦にかけて調子を上げ、ACLラウンド16の上海上港戦でも前半にしっかりと突き放していれば十分に勝ち進めるチャンスがあった。3チームの中ではJ1の成績が最も低迷した神戸も、準決勝進出で底力を示した。ところがせっかくアジアのトップレベルを体感した3チームが、来年は国内リーグに専念するわけで、ACL出場チームが国内リーグで低迷する歴史は長く続いている。
今年の川崎が最多の勝ち点、得点を稼ぎ、最速優勝を果たしたことで「史上最強説」が出ているが、反面本来のライバルが軒並みハンディキャップを抱えたことで一層際立ったことも否定できない。さらにこの川崎でも、昨年アジア王座に就いたアル・ヒラルの域に到達しているかといえば、まだ疑問符がつく。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。