メッシ、英雄マラドーナ“追悼弾”は異次元のプレー 「凄い」を通り越して感じた“恐さ”

瞬間的に「いける」と思ってそのとおりに決めてしまうのは少し恐いくらい

 2016年、メッシはヨハン・クライフのPKを再現してみせている。肺がんであることを発表し、闘病生活にあったクライフへのエールだった。

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 メッシはPKをシュートせずに軽く横へ流し、走りこんで来たルイス・スアレスが決めている。クライフがこのPKをやったのは1982年、キャリアの晩年にアヤックスでプレーしていた頃だ。クライフはPKをイェスペア・オルセンにパスした。オルセンのリターンをクライフ自身が決めているので、メッシのPKは完全なコピーではないのだが、病床のクライフはとても喜んでいたそうだ。

 今回もマラドーナのものとは左右逆なので“完コピ”ではないけれども、やはり天国のマラドーナは喜んでいることだろう。

 それにしてもPKなら機会さえあれば真似できないこともないが、流れの中で似たようなゴールを決めるのは、運と圧倒的な実力がなければできることではない。カットインからのシュートはメッシの十八番ではあるが、瞬間的に「いける」と思ってそのとおりに決めてしまうのは、凄いを通り越して少し恐いくらいだった。

 ヨハン・クライフとディエゴ・マラドーナ。タイプはまるで違うが、ともに近代を代表するスーパースターだった。2人とも、メッシとともに生き続けているように思えた。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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