メッシ、英雄マラドーナ“追悼弾”は異次元のプレー 「凄い」を通り越して感じた“恐さ”
【識者コラム】オサスナ戦で決めた“出来すぎていた”オマージュ弾
SNSで上げられていたその動画を見た時は、感動以上に背筋が寒くなるような感覚があった。リーガ・エスパニョーラ第11節、バルセロナ対オサスナ(4-0)の試合で生まれたリオネル・メッシのゴールである。
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ニューウェルズ・オールドボーイズ時代のディエゴ・マラドーナのゴールとそっくりなのだ。二つのゴールシーンを見比べるとほぼ同じ。右からカットインして左足で右上へシュートを叩き込んだ後、メッシはユニフォームを脱いでイエローカードを貰っている。バルサのジャージの下に着ていたのは、マラドーナが在籍していた時のニューウェルズの背番号10だった。
ただ、その動画を見て不思議に思っていたのだが、マラドーナのゴールシーンで背番号10が左右逆になっている。実は、ニューウェルズでのマラドーナの得点は左からカットインして右足で決めたもので、メッシとは左右が逆だったのだ。動画ではその向きを逆にして、メッシのゴールシーンに合わせていた。だから10番が鏡に映したように逆になっていたわけだ。
マラドーナはニューウェルズでは、公式戦5試合しかプレーしていない。得点はエメレクとの親善試合でのもので、ニューウェルズではこの1点しか決めていない。メッシが着ていたニューウェルズのユニフォームはまさにこの試合のマラドーナが着ていたのと同じで、胸スポンサーも同じ。左右の違いはあれどもゴールまでの過程はそっくりで、ユニフォームまで同じというのはあまりにも出来すぎていた。
ニューウェルズは、メッシが子供時代にプレーしていたこともある地元の名門クラブ。マラドーナ在籍時のユニフォームを着ていたのは、偶然ではないはずだ。
ちょっと恐いと感じたのは、カットインした瞬間にメッシはおそらくマラドーナのゴールをなぞろうとしていたのではないか、ということだ。
メッシは前半にも、マラドーナの「神の手ゴール」をやりかけている。ゴール前に浮き上がったボールにジャンプして手を伸ばしたが、そのままゴールに入る軌道でもあり、メッシはボールに触れていない。ただ、ボールを手で触ろうとしたポーズがマラドーナと少し似ていた。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。