大迫を苦境に陥れる「あくびが出るサッカー」 ブレーメン監督の信念と加速する世代交代
【ドイツ発コラム】5試合連続の1-1、“負けない”ブレーメン 「一番退屈な記録かもしれないが…」
日本代表FW大迫勇也が所属しているブレーメンが、順調に勝ち点を積み重ねている。
前節は首位バイエルン・ミュンヘンとの対戦だったが、非常に秩序だった守備で王者を苦しめ、前半45分にはMFマキシミリアン・エッゲシュタインが先制点をマーク。後半17分、バイエルンFWキングスレイ・コマンにゴールを許し1-1の引き分けとなったが、相手GKマヌエル・ノイアーのファインセーブに阻止されたいくつかのビッグチャンスを決めていれば、敵地から勝ち点3を持ち帰ることも不可能ではない展開だった。
バイエルン戦の結果を受けて、ブレーメンはブンデスリーガ5試合連続で1-1の引き分けとなった。試合後の記者会見でフロリアン・コーフェルト監督は、「ブンデスリーガにある記録のなかで一番退屈な記録かもしれない。だが、我々は非常に規律だった守備を見せてくれた。失点シーンはバイエルンが素晴らしかったが、それ以外、相手に余裕を与えない試合展開にできたと思う。ボールを持った時にも勇敢に攻撃へ移ることができたことを考えると、この勝ち点には満足している」と振り返っていた。
昨シーズン、ギリギリで残留を果たした経験から、コーフェルト監督は今季、手堅い守備で勝ち点を着実に積み重ねることを第一にしている。正直攻撃は機能していない。テレビ解説者に「今日もボールを保持する時間は長いが、ほとんどチャンスが作れない」と指摘されたり、ファンや識者に「あくびが出るサッカー」と揶揄されることもある。
だがコーフェルト監督は、真っ向から反論する。
「我々がどこから来たのか考えてみてくれ。相手チームを翻弄していくことを期待するのは現実的ではない。チームの成長を私は見ているし、勝ち点を積み重ねているのはいいことだ。素晴らしいサッカーではないのは私にも分かっている。だがブレーメンの人は、このチームをサポートしてほしい。正しい道を歩いているんだ」
そうした事情に加えて、ブレーメンは今季「世代交代」にも積極的に動いている。
第4節フライブルク戦(1-1)では、18歳のFWニック・ヴォルテマーデがスタメン起用。この試合前には大迫がスタメン復帰かという声が強かっただけに、スタメンが発表された時には地元メディアからも驚きの声が聞こえてきた。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。