日本代表はとにかく「変化」に弱い 「対応力」不足は選手でなくベンチの問題

日本の選手に「対応力」を求めるのはサッカーだけでは解決できない?

 しかし、日本の選手はどういうわけかこれが苦手である。

 決められた任務を遂行するのは得意だけれども、それで物事が上手くいかない時に変更ができない。おそらく根本的には、サッカーでは解決できない気もする。

 遠藤くらいの立場なら「こうするぞ」と言えるかもしれないが、そうでなければアイデアがあってもなかなか言い出せないかもしれない。周囲に忖度しての同調は得意でも、それを破壊してまで何かやるということが難しい。ヨーロッパと比較して「個が弱い」とよく言われるが、それよりも社会の許容範囲の差ではないかと思っている。

 例えば、ヨーロッパには髭を生やしている高校生がけっこういる。日本にも高校生が髭を生やしてはいけないという法律はないが、あまりそういう人はいない。ヨーロッパの高校生も個性が強いからそうしているのではなく、皆がやっているからそうしているだけだ。大きな違いは個そのものより、個に対する周囲の態度なのだ。髭を生やしても周囲が特に何も言わない。個の主張をするのに、日本ほど勇気が要らない。

 社会環境の違いがメンタルの違いに結びついていると仮定すると、これはもうサッカーの手には負えないと思う。選手に「対応力」を期待するのは無理筋ではないかと。

 だとすれば、「対応力」を発揮すべきなのは監督やスタッフのはずである。

 想定外を減らすべく、あらかじめ「引き出し」を用意すること。それでも想定外が出たら、選手に任せずベンチが対策を指示すること。正解かどうか分からなくても、それを決めなくてはいけないのは、むしろベンチだ。選手が解決してくれてもいいが、日本代表の場合、あまりそれは期待しないほうがいい。

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(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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