「監督をやり続ける意欲は?」 大敗直後に厳しい質問…独メディアの姿勢が代表を鍛える
【ドイツ発コラム】スペインに0-6大敗直後、レーブ監督に説明を求めたドイツTV局の司会者
ドイツ代表がスペイン代表に0-6で敗退した直後のテレビインタビューで、ヨアヒム・レーブ監督はすぐ明確な説明ができずに苦い顔をし続けていた。
ドイツ国営放送「ARD」司会のマティアス・オプデンヘーフェルが、引き分け以上でUEFAネーションズリーグ4強進出を確定できた試合で歴史的大敗を喫したことについて「どのような説明を?」と話を振ると、レーブは5秒間言葉を探す。
「現時点では説明をするのが難しい。今日は我々にとって最悪な一日になってしまった。何一つ上手くいかなかった。ボディランゲージからも、緊張感からも、1対1の競り合いにおける振る舞いにしても、何一つピッチ上で見られなかった。勇敢にプレーしたかったが、オフェンスもディフェンスもいいところが何もなかった」
その言葉を引き継いで、オプデンヘーフェルが鋭く切り込んでいく。
「何一つ説明がないんですか? 良くない試合はありうることです。でもそこからなんとか立て直すために体を張ったり、歯を食いしばったり、内容的にスペインには負けたが、そこに対抗しようと全力を出したということはできたはず。90分間試合はあるのですから」
レーブはそれを受けて気持ちを少し持ち直し、少なからずの説明を口にし出す。
「0-1でこの試合に向けてのコンセプトを放り出してしまった。突然前から追いかけ回し、中盤にスペースを与えてしまった。スペインのようなチームだと、そこをかいくぐってくることができる。コンセプトを失い、組織プレーをなくしてしまい、コミュニケーションがなくなってしまった。0-1で組織的なプレーをあきらめてしまった。今日の試合では、それが致命的だった」
その後はテレビ解説の元ドイツ代表MFバスティアン・シュバインシュタイガーも含めて言葉を交わしあっていたが、最後にオプデンヘーフェルはレーブにこんな質問をしていた。
「今日の0-6を受けても、3月からまた気持ちも新たに監督をやり続ける意欲はおありですか?」
なんと“どストレート”な質問だ。
レーブはすっと頷いた。そして言葉を続ける。
「すべてをしっかりと受け止め、振り返り、自問自答をするのは我々の課題であり、義務だ。我々はもっと違うプレーができるし、もっといいプレーをすることができるのは間違いない。だが我々には今、守備に大きな問題がある。1対1の競り合い、コンパクトさ、守備の軽さ。正しい答えを見出さなければならない。今日はすべてが悪かった。何一つきれいごとを言うことはできない」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。