日本代表MF鎌田が示した“ジダン級”の威圧感 20分で決定機5回…トップ下の序列上昇
パナマ戦の後半途中から出場し躍動 “トップ下”鎌田が持つ「体格」という武器
日本対パナマ、鎌田大地がフィールドに入ったのは後半27分だった。そこから約20分間で5回の決定機を作り出した。
同33分には浅野拓磨を抜け出させるパス、浅野へタックルしたGKが退場になる。同40分にはまた浅野を抜け出させ、2分後にも3度目の鎌田→浅野。3分後には4度目の浅野へのスルーパス。最後はDFの間へ入った三好康児へ丁寧なラストパス、三好のシュートはGKに防がれたが、これもビッグチャンスだった。
相手が10人になっていたとはいえ、これだけ短い時間でこれほど多くのチャンスを演出した例はそうないだろう。
三好と久保建英もこの試合で良いプレーを見せていたし、これまでトップ下の常連だった南野拓実もいる。中島翔哉も2シャドーやトップ下でプレーする可能性はあるだろう。日本代表で最も競争の激しいポジションと言える。
それぞれ特徴が違っているのだが、鎌田だけにしかないのは「体格」だ。
いわゆるトップ下でプレーするのに、体格は基本的にあまり関係がない。他の候補たちは相手から体を当てられないようにプレーするのが上手い。鎌田もそれは上手いが、違うのは体を当てられても持ちこたえられる体格があることだ。意外とこの差は大きいかもしれない。
1980年代に攻撃のリーダー役だったトップ下は、どんどんフィールドから駆逐されてしまった歴史がある。プレッシングが一般化していって、トップ下がプレーするためのスペースがなくなっていった。90年代以降に生き残ったトップ下は、ジネディーヌ・ジダン、リバウド、フアン・ロマン・リケルメ、フランチェスコ・トッティと、いずれも大柄な選手たちだ。フィジカルコンタクトに強く、体を当てられないようにプレーするのも上手かったけれども、当てられてもプレーできるタイプだった。
20分間に5回のラストパスを出した鎌田だが、そのなかにはフィジカルコンタクトを制してからのパスもあった。大柄なトップ下はプレーが緩慢に見える。ジダンやリケルメの時代でさえ、そういう指摘は多かった。だが、ファウルすれば止まる選手と、軽いファウルでは止められない選手では相手に与える威圧感が違うし、実質的なプレーの面でもその差は大きい。ゴール前40メートルでのFKになるか、そのまま決定機になるかの違いは小さくない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。