コロナ禍の“特殊なシーズン”で定まった「FC東京の色」 来年以降の開花準備は整った
苦境のなかで必然的に新戦力が試され著しく成長
昨年2位の成績は、序盤からメンバー固定で戦い抜いた成果とも言える。だが反面、主力メンバーは年齢を重ね、一方で今年は日本代表の室屋成(ハノーファー)、橋本拳人(ロストフ)が海外移籍をした。もし過密日程による5人交代制が導入されず、メンバー固定化が続けば、おそらく失速のリスクは避けられなかったに違いない。もちろん指揮官以下スタッフも、その辺は重々承知していたはずだが、この苦境下で必然的に新戦力が試され著しい成長を遂げた。
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FC東京では、個々が長い距離をスプリントしてカウンターを仕掛けていく。ポゼッション型のチームに比べても、明らかに負荷は高い。そのなかで室屋が抜けた右サイドバックは、拓海、帆高と“2人の中村”が競い、橋本が去ったボランチも安部が試合ごとに成長を遂げ、昨年はU-23チームでのプレーにとどまっていたアルトゥール・シルバも新しい個性を加味した。
他にも原大智、内田宅哉、波多野豪ら生え抜き組が戦力として加わってきたのは、しばらく育成面での成果が見え難かったことを思えば、重要な試金石と言える。
FC東京へ来て3年間で、長谷川監督はコンセプトを整理し、ビジョンに即して選手を補強してきた。とりわけブラジル人選手たちの個性が指揮官の嗜好を表しているが、少なくともチームの色は明確に定まった。全員が方向性を認識したうえで豊富な手駒が揃ったわけで、そういう意味では来年以降の開花準備は整ったと見ることもできる。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。