金崎夢生を変貌させた「ルーティーンワーク」 心技体を磨き上げる最高の準備とは
金崎の言う「試合はデザート」の意味
――では、2016年に向けてどんな準備をしたいですか?
金崎「以前『試合はデザートのようなものだ』と言った監督がいました。おいしいし、甘美な時間を楽しむ90分間なのだと。だから試合の時は、何をしても良い。自由も与えられる。でも、そこに至るまでの過程が一番大事で、プロセス次第で半分以上が決まってしまう。それだけ準備期間で何を行っていくか、がサッカー選手にとっては重要になる。今年も最後のデザートをおいしく頂くために最高の準備をしていきたい。そして、どこであろうと、サッカーを楽しみながらこの1年を過ごしていきたいと思っています」
木場「すごくいい表現だね。トレーナーとしては、選手が少しでも不安なく試合に臨めるようにすることが一番重要な役割となると思っています。最後のデザートを楽しむためには、美しく盛り付けるためのお皿が必要だと思います。そのお皿となる体づくりを一緒にできればと思っています。夢生の名言には負けたけど、その一端を担えればと思っています(笑)」
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このインタビュー後、開幕を迎えた2016シーズンで、金崎夢生はその宣言通りにサッカーを楽しんでいるように見える。Jリーグでは開幕4戦で3ゴールを挙げ、3月24日のロシアW杯アジア2次予選アフガニスタン戦でも気迫に満ちたゴールをもぎ取った。
W杯出場権を懸けた長く険しいアジア最終予選を突破するカギは、この男が握っているのかもしれない。そう思わせるほどに、ピッチ上で躍動している。
この男は確かに覚醒した。だがその進化は、まだ終わりを見せていない。いったいどこまで進化していくのか、それが今から楽しみで仕方がない。
[PROFILE]
金崎夢生(かなざき・むう)
1989年2月16日、三重県生まれ。滝川二高を卒業後、2007年に大分トリニータに加入。翌年のヤマザキナビスコカップ優勝に貢献し、ニューヒーロー賞に選出。10年、名古屋グランパスに移籍し、同年にリーグ制覇。13年、ドイツのニュルンベルクへと移籍。ポルトガル2部のポルティモネンセを経て、15年、鹿島アントラーズに期限付き移籍。自身2度目のナビスコ杯を制覇。リーグ27試合出場9得点を挙げ、09年以来となる代表復帰を果たした。16年、鹿島に完全移籍。
木場克己(こば・かつみ)
プロトレーナー。KOBAスポーツエンターテイメント株式会社代表、アスリートウェーブ西東京鍼灸整骨院アドバイザー、KOBA式体幹☆バランス協会会長、インテル長友佑都らの専属トレーナーを務める。
オフィシャルサイト http://kobakatsumi.jp
〈サッカーマガジンZONE 2016年3月号より一部加筆修正をして転載〉
【了】
馬場康平●文 text by Kohei Baba
軍記ひろし●写真 photo by Hiroshi Gunki