金崎夢生を変貌させた「ルーティーンワーク」 心技体を磨き上げる最高の準備とは
2015年、日本に戻ってきた金崎夢生は、それまでの印象を一変させた。
精悍(せいかん)さの増した顔つきと、そして何よりもそのプレースタイルは周囲に驚きを与えた。
たくましく屈強な体で最前線に立ち、誰よりもハードワークしてゴールへと向かう。
まさにストライカー然としたプレーは、日本の前線に新たな息吹をもたらし、ロシア・ワールドカップ2次予選では2試合に出場して2ゴールを挙げている。
この覚醒の陰にあった「ルーティーンワーク」を、金崎本人と、トレーナーの木場克己氏が語り合う。
金崎が日本代表合宿でも欠かさなかったルーティーンワーク
――日本代表合宿で、金崎選手の練習前のゴムチューブを使ったトレーニングが話題になりました。あのウォーミングアップは、普段からのルーティーンワークなんですか?
金崎「チューブトレーニングは練習直前に必ずやっています。体の軸とか、臀部(でんぶ)周り、脇腹の筋肉を練習で反応できる状態にするため、全部で5、6種類のメニューを行っています。誰が何を言おうと、絶対に練習前に取り入れています。クラブでも代表でも欠かさずやってきました」
――バヒド・ハリルホジッチ監督からは何か言われましたか?
金崎「『なんでそんなことやってるんだ? 早く来なさい』と言われました(笑)。ですが、これをやらないと始まらないと説明して、ほんの少しだけですが、待ってもらいました」
木場「メニューは時間でいえば、10分程度でしょうか」
金崎「その短い時間だけは何とか待っていただきたいと思っています。周りからは、異質に映るかもしれませんが、僕からすれば普段通りにやっているだけなんです。トレーニングのやり方も人それぞれですし、コンディション調整も10人いたら10通りある。そこで、ルーティーンが少し違うからといって、チームの和を乱そうとしているわけではありません(笑)」
――周りに流されず、信じたことを貫くというスタイルでしょうか。
金崎「それほど特別なことではありません。自分に必要だからやっている。日常生活でご飯を食べることなど、同じ感覚です」
木場「夢生は、過去に筋肉系のトラブルを繰り返した経緯があったからこそ、ルーティーンを守り続けているのだと思います。不安があるから、その不安を取り除くためにやり続けてきた。だからこそ、彼の中で欠かせない準備の一環となっている。ケガをした経験がない選手がアップもそこそこに練習前のボール回しに急に入って、捻挫するというケースがよくあります。練習前にケガをしないような状態をつくってから臨む。その一手間がすごく大事なんです。苦しんだからこそ、今のようなことができるのだと思います」