15歳で単身スペイン挑戦 “雑草魂”のゲームメーカー、無名から2部Bに辿り着けた理由
入団テストに合格して強豪ラージョに入団 ミチェル監督の指導を受けて大きく成長
カニージャスは練習が週3回と少なく、自分が望んでいたレベルでなかったために半年で退団。カラバンチェルでは週末を除き週4~5回は練習できる環境となり、同年代と一つ上のカテゴリーを行き来しながら自分磨きに励んだ。フベニールA(主に19歳以下で構成)の活動にも何度か参加し、スペイン1部でプレーする夢に向けた道筋がうっすらと見え始めたなか、フベニールAが3部に降格してしまい、フベニールが2部に所属していたモラタラスへの移籍を決断した。新天地でも「欲しい」と言葉を受けながら、年齢の問題を解決できなかったが、監督の推薦によって強豪ラージョ・バジェカーノ・ユースBの練習参加が実現することになる。
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吉村の現エージェントである門田直輝氏によれば、スペインでは新規の選手だけを集めたテスト形式のトライアウトはなく、これまで地道にキャリアを積み、監督からプレーを評価されたからこそのプロセスだと話す。
「練習参加を通じて、すでにチームに所属している選手たちとの比較や、監督・ディレクター陣の評価などを経て、良ければ契約するというのがスペインの流れです。吉村は(街クラブで)いろいろと評価を頂いたので、ラージョも実際に見てみようという話になったと思います」
数日間に及んだテストに合格し、18歳と同時にユース契約を締結。すぐさまBチームで主力に登り詰め、昇格したAチームで指導を受けたのが、現在は日本代表FW岡崎慎司が所属するスペイン1部ウエスカを率いるミチェル・サンチェス監督だった。厳しい練習に直面しながらも、「すごく成長できた濃密な1年間でした」と吉村は振り返る。
「ラージョはそれまでの街クラブとは違い、グラウンド5~6個、充実したジムもあって、まずは環境に驚きました。練習もプレースピードが速く、クオリティーも高くて、ワンミスが目立つというか、一つミスをすると、普通に1試合、2試合は出られなくなる。選手が23~24人いるなかで、みんな上手いし、チャンスを待っていて、試合に出た時にはスタメン奪取を懸けてプレーし、逆にスタメンで出るメンバーはその座を奪われないように全力を尽くす。そこまでの緊張感は、ラージョ以前には味わったことがありませんでした。試合内容・結果よりもまずは自分の戦いというか、良いプレーをしないといけない。特別言葉に出すわけでなく、選手はみんな心に秘めていて、あの緊張感を作り出せる(ミチェル)監督は凄かったと改めて思います」
ラージョ・バジェカーノでのハイライトとなったのが、スペイン生活5年目を迎えた2017年2月18日に行われたディビシオン・デ・オノール・フベニール第24節のレアル・マドリード・ユースA戦(1-1)だった。4-3-3の右インサイドハーフで先発出場した吉村は、運動量豊富に中盤を駆け回り、チームトップの走行距離12.919km、スプリントのスピードでも同3位の31.3km/hをマーク。ボール奪取からのドリブルや、カウンターの起点となる高精度の左足スルーパスを連発して強烈なインパクトを残し、評価を一気に高めた。
そして、19歳となって約4カ月が経過しようとしていた2017年7月、日本代表MF柴崎岳(現・レガネス)が所属したことでも知られるスペイン2部テネリフェのBチームと3年契約を結び、夢の階段をまた一つ上がったのだった。
(後編に続く)
※取材はビデオ会議アプリ「Zoom」を使用して実施。