“遠藤抜き”のチームは今や考えられない 「すべてに速い」独1部、球際の攻防で急成長
【ドイツ発コラム】シュツットガルトで不動の存在へ… 予想以上に素早くブンデス1部に順応
昨年12月、ブンデスリーガ2部のニュルンベルク戦後にシュツットガルトの日本代表MF遠藤航はドイツサッカーの特徴と目標について、こんなふうに話していた。
「一つひとつ球際の強さは強いなって思うし、これがブンデス1部だったらもっとレベルは上がるのかなとか、スピード感が上がるのかなって感じながらプレーはしています。こういうプレッシャーがあるなか、球際でバチバチ戦う試合を求めてここ(ドイツ)に来たので、それはいい意味で成長にはなると思う。ここでしっかり2部でやり続けて、チームとして昇格して、来年1部でプレーするのが直近での目標になるかなと思います」
昨シーズンは2部ということもあり、中盤からこぼれてくるボールはほぼすべて遠藤のところで回収できていた。相手の攻撃を読み、すっと寄せては鋭い出足でボールを奪取。そこから素早く攻撃へと転じる起点としても機能していた。
だが、1部ではすべてがすぐにイメージ通りいくわけでもない。
今季開幕のフライブルク戦(2-3)では、遠藤がボールサイドに鋭く寄せるもそこをかいくぐられてしまい、遠藤が持ち場に戻る前にゴール前を強襲されるシーンが何度もあった。第3節レバークーゼン戦(1-1)でも結果は引き分けに持ち込んだが、何度も危険なシーンを作られていた。
「ビルト」紙のインタビューに、遠藤は「1部リーグはすべてにおいて速い」と答えていたが、そのスピードに対応していくことが求められている。
対応するとは、個における対人でのタイミングやコース取りといった点においてもそうだし、グループとして、そしてチームとしてのバランスの取り方、リスクのかけ方、持ち場を離れるタイミングなどの感覚を修正・適応していく必要についてもそうだ。
そして遠藤は周囲の予想以上に素早く、対応・修正をしてみせている。
自分の持ち場への意識をさらに高め、不用意に飛び出したりはしない。だからといって消極的な“待ちのプレー”ではなく、少しのミスも見逃さずに虎視眈々と奪えるチャンスをうかがい続けているのだ。頭の中はフル稼働。周囲をくまなく見渡し、常時最新情報を取り入れては自身のポジショニングを微調整させながら、奪いきれる距離感とタイミングをつかんだうえでの鋭いアプローチを何度も見せている。相手がパスを出して展開しようとすると、素早く中盤の底へと戻り、味方の守備バランスのかじ取りをする。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。