激震の清水で「端くれ」新監督が示したメッセージ “熱い気持ち”で呼び込んだ初陣の快勝劇
志半ばで終わったクラモフスキー体制を否定する者はいない
この試合での勝因は「気持ち」の部分が大きい。「プロなのだから気持ちは関係ない」という見方もできるが、そこは生身の人間がプレーするサッカー。あと一歩の寄せは、気持ちが影響するのではないだろうか。ただし、「降格がないシーズンだから気持ちが入らない」ということではないのは、言うまでもないが、ベンチ前からかん高い大声で熱い指示を出す新監督の姿は、これまでの物静かな前監督と比べれば選手たちの気持ちを動かした。
若き指揮官の改革は志半ばで終わってしまったが、それを否定する者は選手もコーチもフロントにもいない。それはピーター・クラモフスキーの人間性と、その改革が間違っていなかったからだ。しかし結果が出なかったことで、新しいチャレンジを貫くことができなかった。
「普通のシーズンであれば、もう少しプラン通りに進められたのかもしれない」とコロナ禍の過密日程の影響があったのではないかと、平岡監督は話している。また選手層など、クラブとしてのサポート体制はどうだったのかという疑問はあるが、この10カ月間で積み重ねた「アグレッシブなアタッキングフットボール」が消えてなくなるわけではない。
これまで一度もベンチ入りすることはなく、試合当日はサテライトのメンバーと三保のグラウンドで一緒に汗を流し、清水の歴代OB監督の3人はすべて日本代表経験者ということから、自らの現役時代を「端くれの選手」と謙虚に話す新指揮官の下、ここから改革の第二章が始まるのだと期待している。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。