日本人“ホペイロ”がドイツ3部クラブで“戦う”理由 「誰もやったことがないチャレンジを…」
【“ホペイロ”神原健太インタビュー|第1回】渡独3年目の29歳、今季イェーナからドレスデンへ“移籍”
ブンデスリーガ開幕を前に行われたDFBポカール1回戦。カップ戦ではジャイアントキリングがつきものだが、2部リーグで昇格候補に挙がっている名門ハンブルガーSVが3部に降格したディナモ・ドレスデンに1-4で敗れたのは、ドイツで大きな驚きとなった。
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そんな快勝劇に沸くドレスデンスタッフの中に、満面の笑顔の日本人が1人いた。神原健太、役職はホペイロだ。ホペイロとは乱暴に一言でいえば、用具係だ。練習着を洗濯・乾燥し、次の練習までに準備する。試合日にはユニフォームなどのロッカールームでの準備をしたり、アウェーゲームの時はパッキングをして荷物をまとめる。スパイクの手入れも大事な仕事だ。
神原はホペイロとして今季、3部イェーナ(4部へ降格)から“移籍”を果たした。ドレスデンは昨季2部リーグから3部リーグに降格したわけだが、ドイツ国内では同情の声がとても大きい。リーグ再開直前のタイミングで複数選手に新型コロナ感染者が出たために、チーム全体が隔離となったのだが、その分1カ月間ずっと週2回のスケジュールで戦うことを余儀なくされてしまったのだ。隔離が解けた後の練習期間もほとんどなかったため、過密日程のなかで沈み込んでしまった。中断前までは調子が上向きで、このままいけば2部残留は十分に可能と見られていただけに、ドイツサッカーリーグ機構(DFL)の決断はドレスデンにとってなんとも残酷なものとなったのは否めない。
3部に降格したのは残念だが、神原にとってはそれでも”昇格”と捉えられる移籍だ。ドレスデンは新しいトレーニングセンターがオープンしたばかりで、非常に充実した環境を手にしている。今季は2部昇格の候補に入っているし、何よりこのクラブにはドイツでもトップレベルの熱狂的なファンがいる。
「個人的にはやっぱり2部所属とかそういうのよりも、クラブの規模とか地力とかそのあたりを重要視しました。さらにドレスデンは夏に新しいトレーニングセンターがオープンするところだったんですよ。自分の仕事により集中できる環境だと思ったので、迷いはなかったですね。残留かどうかではなくて、そこで仕事がしたいという思いが強かったですね」
Zoomインタビューに快く応じてくれた神原は、そう言って笑った。
現在29歳でドイツ歴3年目になる日本人ホペイロ。それにしても選手だったり、指導者だったり、あるいはフィジオセラピストとして海外挑戦をする日本人は年々増え続けているが、ホペイロという役職での海外進出は珍しいパターンではないだろうか。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。