中村憲剛、“悪夢の大怪我”からの301日 「密着ドキュメント」に込められた思いとは?
密着して感じた中村の凄み 「長期のリハビリに意味を見出そうとしていた」
――今回のドキュメント制作でこだわったことを教えてください。
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「まずは憲剛さんの声と想いをしっかり伝えるということですね。そして取材を続けていくなかで、リハビリをサポートするフィジオセラピストの存在が浮かび上がってきました。今回の番組でも登場していただいた髙木祥さんです。実際に各所への取材を続けていくなかで、憲剛さんからも『選手を支える方々がいてくれるからこそ、僕たちはピッチに戻ることができる。なかなかフォーカスしてもらう機会がないと思うので、ぜひ大きく取り上げてもらえたら』という話をもらっていました。リハビリの経緯を追いかけながら、しっかりと“裏方”の存在も伝えていこうとしていた制作チームの方向性を、憲剛さんにも後押ししてもらえました」
――ナレーションに、スキマスイッチの常田真太郎さんを起用されています。
「番組の担当ディレクターが『憲剛さんにゆかりのある人にナレーションをお願いできないか』と考え、候補を出したなかで常田さんに打診させていただきました。実はライブのリハーサルなどで多忙な時期で、しかもナレーション初挑戦だったんですが、『憲剛に関する重要なことで依頼されたら、基本的に断るという選択肢はないです。頑張ります』と快諾いただけたんです。実は常田さんと憲剛さんは同期デビューで、長年に渡ってお互いに“ライバル”と認め合って、切磋琢磨してきた関係でした。こういった部分にも制作チームのこだわりが出せたかなとは思います」
――取材期間は約10カ月にわたりました。継続取材で実感した中村憲剛という選手のパーソナリティー、凄みはどういった部分でしたか?
「まず一番感じたのは、とにかくポジティブ、そして周囲への配慮を一番に大切にする人だということですね。当初はネガティブになる姿も想定していたんですが、怪我の直後から『自分より家族がショックを受けていて、心配させないように、いつも以上に明るく振る舞った』とか、『いろいろな経験をさせてもらってきたけど、大怪我のリハビリだけはしたことがなかった。これで怪我をした選手の気持ちが分かる』と長期のリハビリ自体に意味を見出そうとしたり、実際のインタビュー時は全般的にすごく前向きでした。
ただ、コロナ禍と重なってリハビリが停滞していた時期は、すごく不安だったと思います。でも、そこでネガティブに考えても何も生まれないからと、丁寧に膝と向き合おうとする姿勢が印象的でした。そのなかにあった『絶対に復帰する』という強い信念、『復帰できる』と信じて突き進む姿は、精神的にも真のアスリートだと感じました」
――密着したからこそ感じる、301日前の中村憲剛と、301日後の中村憲剛の決定的な違いはどこにあると思いますか?
「以前からプレーもスタンスも自然体なので、いい意味で『何も変わらない』という表現になるかもしれないですね。ただ、外から見ていて思うのは、周囲への感謝を今まで以上に持つようになったのかなということ。復帰後の試合を観ていると、コーナーキックや選手交代時に、スタンドに向かってすごく拍手をしています。今までもスタジアムの一体感をすごく大切にする選手でしたが、さらにファンや周囲への感謝を表現するようになったような気がします」