東京Vに息づく“天才の系譜”とは対照的 “特効薬”遠藤が存在感、磐田はどこへ向かうのか

名波や藤田らを彷彿させるような個性は育ってきていない

 J2は全42試合中3分の2に相当する28試合を消化し、磐田は昇格圏の2位徳島に17ポイントの差をつけられている。もちろん選手たちは「最後まで昇格を諦めない」姿勢で臨んでいるが、反面クラブ側に託されているのはもっと大局を見据えた再建へのビジョンだろう。

 例えば同じ静岡でも、J1の清水エスパルスは今季「降格なし」の利点を活かし、未来への投資を進めている。実際ユース出身の若い選手たちが次々に戦力として定着しつつあり、現状の成績は低迷中でも上げ潮の観測は提示できている。

 こうして東京Vや清水には「売れる商品」を創る期待値があり、それが基盤でありブランドになっている。だが黄金時代には地元名門高校を供給源とした磐田は、それに比べれば育成の伝統が希薄。クラブのレジェンドである名波浩、藤田俊哉、高原直泰らを彷彿させるような個性は、その後育ってきていない。一方で、本命不在で絶好のチャンスだった今年のJ2でも、結果を手繰り寄せられずに監督を代えている。

 Jリーグ史上でも最高のチームを作り上げた名門クラブは、抜本改革に踏み切るべき重大な岐路に立たされているように映る。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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