森保ジャパン、“悪くはない”が…「運次第」の現状 今後のカギは「ビルドアップの進化」
【識者コラム】コンディションの良いアフリカ勢相手に「接戦に持ち込める力」を見せた
カメルーン、コートジボワールとの欧州遠征2試合は、いろいろ物足りないところもあったかもしれないが、久々の再スタートとしては悪くなかったのではないか。
得点は少ないし、そんなにボールも持てないし、「日本代表って、こんなもんだっけ?」と思ったファンも多かっただろう。たぶん、日本国内でのコンディションの整わない相手との親善試合のイメージがあるからだと思う。今回は欧州でアフリカ勢との対戦なので、コンディションは五分と見ていい。そうすると、だいたいこんなもんだと思います……、はい。
ロシア・ワールドカップ(W杯)を思い返しても、早々に退場者が出て10人のコロンビアになんとか勝利しただけで、セネガルにはドロー、ポーランドに負け(半分はわざとだが)、ベルギーにも負け。1勝1分2敗なのだ。
試合展開は極端に優勢にはならない代わりに、極端に劣勢にもならない。強豪国と当たればまた別だが、基本的には接戦になる。今回の欧州遠征も接戦で、日本は接戦らしい戦い方をしていた。具体的にはミドルゾーン中心のプレッシングと、そこからのハーフカウンターである。
接戦に持ち込める力は見せたので、悪くはないと思う。ただ、このままだと常に「運次第」という試合になってしまうわけで、そこからいかに脱却するかが森保一監督の日本代表には問われているわけだ。
その点で今後のカギを握るのは「ビルドアップの進化」ではないかと考える。
まず、ロシアW杯からの宿題として、後方でキープして流れを変えられるかどうかがある。ベルギー戦では終盤に押し込まれた。空中戦メインに切り替えられ、クリアするのが精一杯となり、2点のリードをひっくり返された。相手の勢いを削ぐには、相手のハイプレスを外してキープし、いったん押し返す流れを作りたかったが、それができなかった。
コートジボワール戦ではGKにシュミット・ダニエルを起用し、GKも組み込んでのビルドアップにようやく手をつけていた。相手がそれほどプレスしてこなかったこともあり、無難にはこなしていたが、さらに洗練させていく必要がある。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。