ビジャレアル在籍12年…Jリーグ佐伯理事が見る久保建英 「“超級クラス”を求められている」

ビジャレアルでの最初の2年間はU-19男子チームスタッフとして働いた【写真:ⓒJ.LEAGUE】
ビジャレアルでの最初の2年間はU-19男子チームスタッフとして働いた【写真:ⓒJ.LEAGUE】

久保建英が加入することで高まった注目度…それでも「ビジャレアルは一切変わらない」

 クラブ理念がしっかりしているビジャレアルに2020年夏、久保が加入した。19歳の青年に対し、日本からは取材依頼が殺到した。日本における注目度は高まり、ニュース欄では毎日のように「ビジャレアル」という単語を見かけるだろう。日本人にとってはぐっと距離が近くなったような気がするクラブだが、ビジャレアル側はどのように感じているのだろうか。

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「久保くんがいるビジャレアルと、久保くんがいないビジャレアルで大きく変わったことは、日本における認知度と露出の量だと思う。ビジャレアルは一切変わらないし、変わることもない。なぜなら、ビジャレアルはこれまで“マーケティング補強”をしたことがない。他のクラブは日本人をマーケティング的な要素を含んで補強することがあると思うけど、ビジャレアルはどの選手に対してもしたことがない。だから久保くんを獲ったのは戦力として。でも、ふたを開けてみれば『なんだ、これは?』というぐらいの反響で追いつかない。でも、たとえそれが久保くんであれ、ビジャレアルにはスター選手が何人も在籍した過去がある。そのなかでも1人の選手がクラブを変えるようなことはなかった。クラブのフィロソフィーや目指すものが強固で、明確にされているから。クラブを超える人物は存在しないというのがコンセプト」

 もちろん“特別扱い”はしないし、1人の戦力として、久保建英という選手として見ているのがクラブの現状だという。そのなかで久保は、ここまで開幕5試合連続の途中出場にとどまっている。昨季スペイン1年目となったマジョルカでは、リーグ戦35試合4ゴール4アシストを記録。特に新型コロナウイルスによる中断明けは、圧倒的なパフォーマンスを見せた。今季はUEFAヨーロッパリーグ(EL)の戦いもあるなかで、どれほど印象的なプレーを見せるのか注目が集まっている。現在、久保を間近で見守る立場となっている佐伯理事は、19歳の日本人アタッカーをどのように見ているのだろうか。

「これまでスペインリーグは、日本人が活躍できないとされてきた。私も正直、なぜだかよく分からないけど……、言えることは『それぐらいだったら上手いやつ、いくらでもいるよ』ということかな、と。外国人枠を埋めるということは、その他の22人よりも飛び抜けて上手くないといけない。それぐらいだったら、同じぐらいだったらU-23にもいるというのがボーダーラインだったのかな。強い・速い・上手いだけでは、なかなかプロになれないというのは、スペインリーグにはさらにあるのかなと思いますね。

 あとは、選手が身を置くところも大きく変わる。例えばマジョルカにおける久保くんとビジャレアルにおける久保くんでは、全く違う。マジョルカでは助っ人だったけど、ビジャレアルではまだそうじゃない。外国人枠を埋めるだけの、彼ら以上のものを見せられるかというハードルが高い。スペインに来る日本人には、『超級クラス』を求められている。上手さで言うと、(リーガ内でも)ビジャレアルの選手は上手い。そのなかで久保くんが『超級クラスか』ということが求められている。でも、久保くんに関しては19歳になったばかり。人間としてもスーパーで、日本を支えていく選手だけど、よく考えれば19歳の青年。それを周りがリスペクトしないと。いらないプレッシャーをかけるのは違う気がしていて。こんな田舎町のビジャレアルに来たばかりだけど、フットボールに集中できる環境なのはいいことかなと思います」

 久保にとってはまた新たな挑戦。今、自身と向き合っている久保は、もがきながらもその環境すら楽しんでいることだろう。もちろん、ビジャレアルの久保建英という注目度はさらに高まった。海を渡った日本からは、状況を理解してどれだけフラットな目で見られるかが重要になってくる。そのなかでも、ビジャレアルというクラブはいつでも冷静に、「久保建英」という選手とともに成長しようとしていることは間違いないだろう。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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