ビジャレアル在籍12年…Jリーグ佐伯理事が見る久保建英 「“超級クラス”を求められている」
【Jリーグ・佐伯夕利子理事インタビュー|第3回】久保が所属するビジャレアルは「胡坐をかいていたら沈没してしまう」
今シーズンのリーガ・エスパニョーラで、日本から最も熱い視線が注がれているクラブといえば、日本代表MF久保建英が期限付き移籍したビジャレアルだろう。バレンシア州に本拠地を置き、“イエローサブマリン”の愛称を持つこのクラブで長年スタッフとして働く佐伯夕利子氏が、今年3月からJリーグの常任理事に就任した。父親の仕事の都合により18歳でスペインに渡り、19歳から指導者の道に進んだ佐伯氏は、スペインで日本人として初めてS級相当のライセンスを取得して各年代の指導にあたり、日本人および女性で初めて同3部で監督を務めた経験を持つ。女子チームではアトレティコ・マドリードなどビッグクラブで指揮を執ったこともあり、2008年から現在のビジャレアルでフロントスタッフを歴任。海外での日本人指導者、女性指導者の第一人者である佐伯理事が見てきた「ビジャレアル」というクラブとは――。「Football ZONE web」の独占インタビューで、クラブへの想いを明かした。
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19歳で指導者になり、3部リーグで監督、アトレティコで女子チームを指導、そしてバレンシアでは強化も担当した。いろいろな経験を積んでやってきたのが、ビジャレアル。2008年にやってきてフロントに入り、今では12年が経った。
「もともとビジャレアルに声をかけてもらった時にはフットボール総務部という契約だった。指導者として生計を立てていけるのはプロの監督しかないので、フルで職員として働いて欲しいからフロントの契約書になる、と。ただ業務が終わったらピッチに下りて、指導したらいいと言われた。最初の2年間はU-19男子のスタッフ、そこからレディースの監督を6年。そのあとは女子5チームの強化育成責任者を兼任も含めて2年間やったので、レディースに8年ぐらい関わっていた」
ビジャレアルでは12年間、クラブの移り変わりを見てきた。リーガでは一桁順位が常連の強豪だが、2部降格も経験。それでも昨季は5位の好位置でフィニッシュした。12年の間ではクラブのハード面が大きく変わり、練習場8面が10面に。第二スポーツセンターができて、4面加わった。スタジアムも増築して5000人席が増え、急速な成長を遂げた。それでも、ビジャレアルというクラブには変わらないものがある。
「ポリシーとか理念は昔から変わっていない。スポーツセンターに入ると、一番に見えるのが、黄色い小屋。そこにバレンシア州の国旗と、スペイン国旗とビジャレアルのクラブ旗が立ててある。実はこの小屋は昔、“クラブ”だった。ビジャレアルというクラブがこの建物一つで完結していた。1階にロッカールームがあって、お湯も出ない水でシャワーを浴びて、2階に二つ机がある。スタッフがそれぞれ作業し、用具室にはカラーコーンやビブスやらを収納してある。クラブがあの小屋一つで完結していた。クラブが大きくなってスタッフが入れ替わっても、私たちの起源はこれなんだというものを忘れないために、会長から絶対に取り壊さすなという命令がある。謙虚さを忘れないように、と。5万人の小さな田舎町なので、胡坐をかいていたら沈没してしまう。市民の支えであり続けることが、ビジャレアルというクラブの存在意義。そこのエッセンスを失ってしまったらサポートしてもらえるようなことがなくなる、というちょっと独特なクラブ」