「多摩川クラシコ」は日本のクラシコに? FC東京が川崎戦で誇示した“異質な完成形”

描いたシナリオを遂行したFC東京、ライバル川崎に肉薄

 当然川崎陣営も、それが十分に分かっているから早めに動いた。後半開始から大島と三笘を入れ、さらに同20分には小林悠、旗手怜央も送り出し流動性を高めた。実際三笘の突破はFC東京の守備網を切り裂き、大島のシュートがポストを叩くシーンもあったから、勝者を選び出したのは運に過ぎないという見方もできる。逆に準決勝がホーム&アウェーなら、川崎はもっとゆとりを持って戦えたに違いない。

 ただし明白なのは、描いたシナリオを遂行し切ったのはFC東京で、長谷川監督が清水、ガンバ大阪時代に続き成功を繰り返しているということだ。現状ではまだFC東京が川崎をリーグ戦で上回るのは難しい。しかし指揮官は、持ち駒の特徴を的確に引き出し、隙がなく力強い有力な対抗馬として近隣のライバルに肉薄している。多摩川クラシコが日本のクラシコになる日が近いのかもしれない。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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