3人合わせて「111歳」 甲府のベテラン3バックが今でも輝ける理由とは
指揮官がこの3人を組ませた意図とは
この3人は、2015年シーズン、5月16日の1st第12節のモンテディオ山形戦で初めて3バックを組んだ。2勝9敗で最下位に低迷し、樋口靖洋前監督が契約解除された3日後、後任に就いた佐久間悟新監督によって試された。指揮官は、その意図をこう語った。
「引いて守らないと、安定が図れないと考えた時、むやみに人に食い付いたりせず、スペースを見つけて守れ、しかも侵入してきた相手に強くいける選手が必要でした。前につぶしにいける臣(山本)は中央で動かせない。脇には迎撃するタイプを置きたかった」
新布陣ははまった。山形戦から3連勝するなど1st残り6試合を4勝2分。前半戦を甲府史上最高位の12位で折り返した。
土屋が、何度も連続して体を投げ出し、相手のシュートをブロックする姿は感動的である。山本は的確なコーチングだけでなく、ボールを前向きに奪ってチームに勢いをもたらす。津田はどんなに劣勢になっても闘争心の火を消さない。3人は、お互いの良さを生かしながら、価値を高め合っている。111年分の経験値はだてではない。
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迎えた2016年シーズン、土屋、山本、津田の3人は開幕から3戦続けてスタメンを飾り、1勝1分1敗、2失点と上々のスタートを切っている。
111歳の3バックがさらなる進化を果たし、あらためてその真価を見せつけるのだろうか。
[PROFILE]
土屋征夫(つちや・ゆきお)
1974年7月31日、東京都生まれ。高校卒業後、ブラジルへ留学。その後、97年にヴェルディ川崎へ加入。99年にヴィッセル神戸、柏レイソル、大宮アルディージャを経て2007年から東京ヴェルディ。13年から甲府でプレーを続ける。
山本英臣(やまもと・ひでおみ)
1980年6月26日、千葉県生まれ。ジェフユナイテッド市原ユースを経て99年にトップ昇格。2003年に甲府へ移籍。09年から8季連続でキャプテンを務める。甲府の象徴的な存在としてチームをけん引する。
津田琢磨(つだ・たくま)
1980年10月4日、埼玉県生まれ。帝京大卒業後、2003年に甲府に加入。08年に愛媛FCへと移籍したが、シーズン途中で再び甲府に復帰。12年には、24試合連続無敗記録と、チームのJ1昇格に貢献した。
〈サッカーマガジンZONE 2015年12月号より一部加筆修正をして転載〉
【了】
羽田智之●文 text by Tomoyuki Haneda
鷹羽康博●写真 photo by Yasuhiro Takaba