名古屋、敵地で浦和に“ウノ・ゼロ”勝利 イタリア人指揮官が授けた“一石二鳥”の戦術とは?
サイドをシンプルに使い、マルティノスの脅威を抑えつつ決勝点を呼び込む
名古屋グランパスは、4日のリーグ戦で敵地に乗り込み浦和レッズに1-0で勝利した。その背景には、浦和の強みを抑えつつ名古屋の強みを発揮するマッシモ・フィッカデンティ監督による一石二鳥の戦術があった。
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名古屋はこの試合で、ダブルボランチをMF米本拓司とMF稲垣祥で構成。ブロックを作った守備で強さを発揮できる選手を中央に置くことで、攻撃の際にサイドアタッカーを生かしたいとはいえ、まずは中央でボールをつないでから攻撃に入りたい浦和をハッキリと制限した。
そのうえで、マイボール時には両サイドのMFマテウスとMF相馬勇紀を生かす意図が明確だったが、この時には逆にボールを中央経由ではなく、サイドからサイドに運ぶ形で攻撃を組み立てた。フィッカデンティ監督は「確かに(ボールの)悪い失い方をすることで1人、2人でゴールまでいかれてしまう選手が多いのが浦和なので、一瞬でもスキを作ったらやられるぞと準備してきたので、そういったところも集中してやれた」と振り返る。
こうした部分をもう少し具体的に話したのが、DF中谷進之介だった。センターバックとして中央の守備に安定感をもたらした一方で、マイボール時の動かし方については指揮官からの明確な指針があったと明かしている。
「あまりリスクを冒さないというか、サイドでいけるなら、僕らにはサイドに速い選手がいるので、そこを使っていこうという話はずっとされていますね。(サイドからならカウンターを受けにくい?)それもあるし、やっぱり関根選手とマルティノス選手を下げたい意識もあった。ハーフタイムに監督から言われたのは、関根選手とマルティノス選手だったら、マルティノス選手のほうからどんどん仕掛けていこうという狙いがあったので、後半は僕らの左サイドから攻めることを意識していた」
前半、浦和の攻撃陣の中で最も名古屋に脅威を与えたのはマルティノスのサイドアタックだった。グラウンダーのクロスで決定機を導いたシーンがあり、DF吉田豊がPKになっても全くおかしくない接触で止めた場面もあった。キーマンの破壊力を抑制するために、そのサイドから攻撃して守備に走らせることという戦略的な指示もあったという。
その結果、後半9分の決勝ゴールはマテウスがマルティノスのサイドから一気にドリブル突破してFW金崎夢生の決勝ゴールをアシストした。それ自体は出来過ぎの感もあるが、相手の長所を消して自分たちの有利につなげるという論理的な策があった。
ホームでは6-2と大量得点で勝利した浦和戦だが、敵地ではイタリア人指揮官の代名詞でもある“ウノ・ゼロ”での封殺。チームとしてのゲームの進め方で差を見せた名古屋だが、それを導いたのはフィッカデンティ監督だと言える試合だった。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)