FC東京、過酷な9連戦で“才能開花” 指揮官の大胆な実験が生んだ「近未来への希望」
生え抜きの若手が次々に台頭、近い将来の収穫につながる兆し
また、こうして得点力が担保されたことで、チーム全体への相乗効果も見て取れる。相手にボールを支配されてもDFに過度な精神的な負担がかからず、他チームに比べれば明らかに焦りやミスが少ない。プレスをかいくぐる速いタッチのビルドアップも精度を高めている。
リーグ戦で喫した5敗中2敗が森重真人不在の試合だったことで替えが効きにくいことを物語っているが、反面生え抜きの内田宅哉、原大智、品田愛斗、波多野豪、木村誠二、バングーナガンデ佳史扶らが次々にピッチに立ち、試合を重ねた選手たちは着実に貢献度を増している。シーズン当初からスタメン出場を続けてきた安部柊斗は主力としての自覚も高まり、サイドバックでは帆高、拓海と2人の中村が競い合っている。新陳代謝と競争力が高まり、上昇機運も見え始めた。
長谷川監督は、9月初めのルヴァンカップ準々決勝で名古屋に快勝すると、ベストメンバーでの戦いにメドが立ち「次はメンバーが変わっても質を落とさないように」と語った。実際9月は大胆な実験にも着手してきたわけだが、近い将来、大きな収穫に繋がる兆しも見えてきている。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。