“失われた”小学生フットサル全国大会が実現 子供たちの笑顔と涙…コロナ禍で奔走した3人の熱意
コロナ禍で行われた大会だからこそ“見えたもの”
今大会の実現には、3人のフットサル“バカ”の存在が欠かせなかった。P.S.T.C.ロンドリーナの阿久津貴志氏、ブリンカールFCの古居俊平氏、フウガドールすみだエッグスの金川武司氏の3人である。3人は連携を取りながら、参加チームの募集、会場の確保、新型コロナウイルス対策のガイドライン作成などの業務を行い、大会の実現にこぎつけた。
この大会を実現するに至った経緯について、阿久津氏は「バーモントカップがなくなった時、関東圏でそれに代わる大会をやれればなという思いがありました。千葉県でフットサルをやっている人たち、茨城県でフットサルをやっている人たち、東京都でフットサルをしている人たちにも声をかけ、関東大会をやろうとしました。それと同時に、古居くんたちは東海で同じような大会を開催しようとしていて、関西でも同じような動きがありました。そこで全国規模にしようという話が持ち上がっていったんです」と、説明した。
今大会は、あくまで民間で行われた大会だ。それでも新型コロナウイルスの影響で、バーモントカップが中止になったことについては、日本サッカー協会(JFA)の内部にも心を痛めている人がおり、個別に大会の実現を願う声があったという。そうした声を間接的に受けたこともあり、3人は大会の実現に奔走した。だが、市町村で新型コロナ対策を行っており、大会への参加ができないクラブがあったり、新型コロナウイルスの拡大を懸念する声が上がったりして、一筋縄にはいかなかった。
各地域を代表し、まとめられるクラブから参加の意思表明があり、なんとか大会は実現されることになった。それでもJFA管轄ではないことから、他のサッカーの大会や選考会などと日程が重なり、参加を辞退するチーム、ぎりぎりの人数で戦うことを強いられるクラブもあった。
それでも会場には笑顔があふれ、子供たちは敗北に泣き、勝利を喜んだ。阿久津氏は「率直に大会をやって良かったなと思います。親御さんの観戦に人数制限をするなど、新型コロナウイルス対策のガイドラインも作り、それに沿ってやりました。そのなかで、親御さんたちが、ライブ配信の方法を学んで見に来ることができない人たちにも試合を見せてあげるなど、新しい動きもできたんです。コロナ禍だからこそ、見えたこともたくさんありました」と、目を細めた。
自身のチームが準優勝に終わった古居氏も、表彰式後も喜ぶちはら台SCの姿を見ながら「本当に良かった」と言葉に力を込める。
「ちはら台SCの選手たちが喜ぶ姿も、うちの選手たちが泣く姿も、この大会がなければ、それすらもありませんでしたから。予選で敗退したクラブのチームが『ありがとうございました。大会、楽しかったです』と言って、頭を下げて帰って行ってくれました。この大会に来て、ワクワクして過ごして、負けてしまっても『楽しかった』と言ってくれた。その姿にあらためて、開催して良かったと思いました」
普段通りの1年を過ごすことができ、バーモントカップが開催されることに越したことはなかっただろう。だが、コロナ禍で実現した民間大会は、公式記録に残ることはなくとも、参加した子供たちの胸には強く残ったはずだ。
Futsal X
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