サッカー選手の“本当の上手さ”とは? 南米に渡った日本人が痛感、心技体は「心が90%」
どんな環境でも「最高の力を発揮できる」かが選手として重要な要素
亘は、現在マンチェスター・シティで活躍するFWセルヒオ・アグエロの凄みを例に挙げた。
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「プレーヤーの本当の上手さって、なんなのかということです。アグエロよりリフティングが上手い選手はたくさんいる。でも彼は物凄いプレッシャーがかかるビッグマッチのチャンスの場面で、最適の判断とテクニックを駆使して結果を出す。だから周りを掌握できるんだと思うんです」
南米から単身欧州へ乗り込み、逞しく結果を出しながら周囲を掌握していく選手たちを見て、亘はつくづく「指導者には柔軟性が必要だ」と感じる。
「ある選手が20歳まで凄く理解のあるチームで育ってきて、そこからギリシャやウルグアイへ行ったら全然できません、では寂しい。もし次のチームが自分の嫌いなタイプのサッカーをやっていたとしても、そこでもできる選手になっちゃえよ、と僕はいつも言っています。そのためにもまず指導者に柔軟性がないと、選手にも柔軟性はつきませんからね」
今年亘は最高齢の48歳で、S級ライセンスを受講している。南米で挑戦すれば、もっと簡単に取得できたかもしれないが、敢えて逃げずに日本で挑戦する道を選んだ。
「南米で指導者ライセンスを買ってきたんだろう、と言われるのは嫌ですからね(笑)。与えられた環境で最高の力を発揮する。それが解決力。食っていける選手になれるかどうかを分ける重要な要素だと思います」
かつて指導をした選手たちから「最近ようやく亘さんが言っていたことが分かるようになってきましたよ」と声をかけられ、凄く励みになっているという。日々のトレーニングで話し、蒔いた種が数年後に収穫になる。改めて亘は「育成とはそういう仕事」なのだと実感している。(文中敬称略)
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。