今こそ問われる清水の覚悟と信念 今季13敗目、「可能性を感じる敗戦」をどう見るか

3勝3分13敗、“降格なし”の異例シーズンで目指すべきもの

 今シーズンはミスから先制を許し、追加点を奪われ、終了間際に1点を返すのがやっとというパターンで敗戦することが多いが、今回の浦和戦での失点は自分たちの単純なミスというより、試合巧者の相手にしてやられたという印象だ。もちろん、2失点目はフィニッシュまで到達できずにボールを奪われており、全員が前がかりになり過ぎリスク管理ができていなかった点は否めないが、これまでとは内容が異なる「可能性を感じる敗戦」だった。

 しかし、まだまだ課題は多い。クラモフスキー監督は「相手にチャンスを与えないこと、自分たちのチャンスを決めきること」、10試合ぶりに先発出場したDFエウシーニョは「ミスを少なくすること」、そして出場停止明けで戻ったキャプテンのDF立田悠悟は「試合運びとゴール前での質」を課題に挙げている。いずれも簡単に解消できることではないが、それを克服しなければチームが目指す「自分たちのサッカー」は確立できない。また、この試合では5人のブラジル人選手が同時に先発出場したが、日本人選手の奮起も不可欠だと感じている。

 コロナ禍の中でスタートした今シーズンも、折り返しの時期を迎えた。清水は19試合を消化して3勝3分13敗と下位に沈んでいる。結果が求められるプロは勝利こそがすべてというのは正論だが、一生に一度あるかないかの“降格なし”のシーズンをどう捉えるかは、J1の18クラブそれぞれの立場によって違うだろう。スポンサーや決して安くないチケットを購入してスタジアムに来場する観客が勝利を期待していることは考慮しなければいけないが、クラブに本気の覚悟と信念があるのであれば、未来につながるチャレンジを貫くことも今シーズンは許されるのではないかと思っている。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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