今こそ問われる清水の覚悟と信念 今季13敗目、「可能性を感じる敗戦」をどう見るか
【J番記者コラム】今季初の連勝を懸けた重要な一戦も…浦和に1-2敗戦
清水エスパルスは前節の湘南ベルマーレ戦で、今シーズン初の無失点試合で3-0と勝利し連敗を「7」でストップした。ただ、敵将の浮嶋敏監督には「清水が今までの戦い方を捨てて、ロングボールを入れてこぼれから打開するというやり方に切り替えてきた」と試合後の会見で指摘された。これに対して、清水のピーター・クラモフスキー監督は「試合をコントロールすることができ、スペースを上手く使えていた。見方によっては違うのかもしれないが、それはここまで継続してやってきたこと」と話している。
確かにここまでの清水は、頑固なまでに自陣からボールをつなぐサッカーを展開してきたことは事実であるが、「特に連敗中は『ボールを大事にする』という捉え方を選手たちが勘違いしていて、ダイナミックな動きというものがなくなっていた。それが悪い方向へ向かっていたが、湘南戦ではそこが多く出せていた」とMF中村慶太はこの試合での戦い方を振り返っている。前方へ入れるボールは増えたが、それはあくまでもやりたいサッカーをやりやすくするため――。先制点のシーンでは自陣から10本のパスをつなぎ、FW後藤優介のクロスをニアでFWカルリーニョス・ジュニオが決めたものであり、決して今までの戦い方を捨てたわけではなかった。
そんなビルドアップに幅ができた清水が23日、今シーズン初の連勝を目指して、試合前の時点で暫定8位につけていた浦和レッズをホームに迎えた。この試合に向けて、チームは湘南戦での戦い方がフロックでないことを証明するための大事な一戦だと位置付けており、選手たちも立ち上がりから積極的にボールを動かし、セカンドボールも回収していた。また、パスミスからボールを失っても素早い切り替えで主導権を渡すことなく、前節の暫定17位対18位の戦いでの1勝がこれほどまでに選手たちに自信を与えるのかと驚いた。
しかし、決定的なチャンスまでには至らずにいると、前半21分にCKのこぼれ球から浦和DF山中亮輔にスーパーミドルを叩き込まれてしまう。浦和の初シュート、そして前半唯一のシュートを決められてしまった。
後半14分には、清水のCKでDF陣が上がっていた裏をカウンターで突かれ、MF長澤和輝のスルーパスからFWレオナルドに独走を許し、最後は“清水キラー”のFW興梠慎三に追加点を決められた。清水も後半アディショナルタイム1分に、後藤のクロスからFWティーラシン・デーンダーがダイレクトボレーで一矢を報いたが、あと1点が奪えずに勝ち点をつかむことはできなかった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。