今季J1はウイングの“当たり年” 川崎の三笘、C大阪の坂元…日本人特有の技巧と俊敏さ
一時ウイングは絶滅危惧種になったが近年は復活傾向
FC東京に加入したアダイウトンの馬力も凄まじい。ウイングプレーヤーではないが、サイドで長い距離をドリブルする時はフィジカルコンタクトをものともせず突進、異様に迫力がある。カナダの100mスプリントの大スターだったベン・ジョンソンみたいだ。
力感でいえば大分トリニータのウイングバック、田中達也も素晴らしい。ゴリゴリと抜いていくドリブルは日本人選手としては珍しいタイプかもしれない。
ウイングらしいスピードスターとしては、前田大然、仲川輝人(ともに横浜FM)、古橋亨梧(ヴィッセル神戸)が快足ぶりを発揮している。
清水エスパルスの西澤健太は左サイドからカットインしての右足の一発に威力があるが、今季はそれ以上にセットプレーを含めてキック力を生かしたアシストが目を引く。正確でスピードのある球筋はケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)を思わせるものがあり、もしかしたら右に置いてクロスを蹴らせたほうがいいのかもしれない。右ウイングには俊敏な金子翔太がいるが、サイドを替えても面白いのではないか。
かつてウイングは攻撃の花形だった。1980年代あたりから2トップが主流になって、一時ウイングは絶滅危惧種になっていたが、近年は復活してきている。相手を抜き去る技巧とスピード、クロスボールが生み出すスリルが見られるようになった。技巧と俊敏さで、日本人には向いているポジションでもある。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。