コロナ禍でなければ間違いなく“大ブーイング” 迫力なきFC東京、ホームのみで今季4敗目
前半からのリトリート徹底は明らかにチーム戦術だった
FC東京はパワーを備えたタレントが多いので、特にブラジル人アタッカーを軸としたロングカウンターには威力がある。実際攻めるしかなくなった終盤は、アダイウトンの痛快なドリブルとパワープレーで追い込んだ。
長谷川監督は言う。
「1-3になってからは迫力がある攻撃ができた。ホームでは、あの形で前半から闘わないといけない」
しかし前半からのリトリート徹底は明らかにチーム戦術だし、何も起こらずに終えた前半を経て自信を蓄えたのは大分のほうだった。
確かに最終ラインから丁寧に繋ぐばかりがサッカーではない。そう考えれば、FC東京のビルドアップや中盤を省略した断続的なパワープレーや個の力を活かしたカウンターも、対川崎の打開策の一つを示唆したのかもしれない。
だがリーグ戦では、全チームと平等に総当たりをする。やはり大声援がなくても、ホームではしっかりと相手を叩きのめす術を持たないとタイトルを掴み取るのは難しい。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。