“自滅”する清水、泥沼6連敗 ポゼッションへの過剰な意識がサッカーを窮屈にしている
鈴木の初アシストとティーラシンの15試合ぶりゴールが一筋の光明
ただ、そのなかでも後半34分、6試合ぶりに先発した18歳のMF鈴木唯人のパスから、怪我のために調整も含めて3試合ベンチ外となっていたFWティーラシン・デーンダーが、FC東京との開幕戦以来15試合ぶりにゴールを決めた。
「周りに刺激を与えられるようなプレーをしようと意識していた」と鈴木は試合後に語ったが、これまではその持ち味であるボールキープからドリブル突破を仕掛けて、強引ともとられるシュートを放っていた。鹿島戦でもその持ち味を発揮していたが、このシーンでは選択肢がいくつかあったなかで、ボックス内のティーラシンへノールックパスを冷静に入れて初アシストを決めた。鈴木本人にとっても大きなアシストとなったが、「若い自分たちがもっと鼓舞すること」というコメントは、チームにとっても大きな刺激になるだろう。
また、ティーラシンもここまで13試合446分の出場で6本目となるシュートで2ゴール目を決めたが、本来は3トップの真ん中を担う役割で今シーズンに獲得した選手。ここまで長きにわたり、その役割を果たしてきたFW鄭大世がこの夏にアルビレックス新潟へ期限付き移籍したため、現在はFWカルリーニョス・ジュニオがそれをこなしているが、鹿島戦で決して簡単ではないシュートを決めたことでティーラシンの調子が戻れば、攻撃のバリエーションはさらに増えてくるはず。この得点が、良いキッカケになることを期待したい。
クラブワーストの連敗は7試合。1996年の記録だが、当時は「延長Vゴール方式」だったため90分での連敗と考えると、現在の6連敗がクラブワースト記録となる。次節の横浜F・マリノス戦はまさに正念場となるが、今回の連敗スタートとなった相手(第11節/3-4)から勝利することで、厚く重苦しい雲が晴れ、高く険しい山頂がおぼろげにも見えてくるのではないかと思っている。
最後にJリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドラインの改定に伴い、手拍子が解禁されて初のホームゲーム開催となったが、「たかが手拍子」と侮るなかれ、スタジアムの雰囲気は大きく変わった。清水の調子が上がらないのは、あの熱いサポーターの応援がないことが原因かどうかは分からないが、1日も早くコロナ禍以前のスタジアムに戻ることを願っている。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。