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世界を驚かせたマンUのファルカオ獲得 コロンビア代表FWの未来に広がる暗雲
ラテン系選手とマンUの相性の悪さも不安要素の一つ
さらに筆者が最も不安視するのは、マンチェスター・Uとラテン選手の相性の悪さである。
それは一概にクラブだけではなく、マンチェスターという街にも問題がある。
やはり、首都ロンドンと比べれば、マンチェスターはイングランドの一地方都市だ。コスモポリタン性では首都ロンドに大きく劣り、イングランド北西部の郷土色が非常に強い土地である。
もちろん、スペイン語を話す住民は極端に少なく、英語もマンチェスター訛が強い独特なもの。また食事のチョイスも、ロンドンとの比較では非常に限られたものになる。
さらに、これもマンチェスターがラテン人に人気がない理由のひとつだが、天気が悪い。天気が悪い英国の中でも、飽きれるほど雨が多い街として有名だ。
もちろん選手が若ければ、言葉も覚え、文化、天候にも慣れる可能性は高い。しかしファルカオは28歳。しかも家族がいる。ファルカオ本人が苦にしなくても、夫人がマンチェスター生活に慣れなければ、これも大問題だ。
だから、やはり北イングランドのチームは「英国色」が強くなる。それは、ファン・ハールがマンチェスター・Uにとって、初の非英国人監督ということでも分かるだろう。
あのマンチェスター・Uの頑張るフィジカルなサッカーの伝統も、それもファン・ハールが壊すのかも知れないが、ラテン系選手とは相性が悪い。
逆に、チェルシー、アーセナルは多国籍軍団となっても、ロンドンという国際色豊かな都市に受け入れられる。
もちろん、マンチェスター・Cという例外もある。チリ人の監督で、アルゼンチン、ブラジル、スペインのラテン系も多い多国籍軍団だ。
しかしこのチームを作るには途方もない資金が投入されているし、攻守のバランスは完璧だ。昨季終盤、ヤヤ・トゥーレが「誕生日を無視された」といって騒動になったが、2012年に43年ぶりとなるプレミア優勝を果たし、昨季もイングランド王者となったことで、今のところスーパースターのエゴも抑制されている。
まあ今後もマンチェスター・Uが、お隣のシティのように大金を湯水のように投入し、また再び欧州随一の強豪クラブに復活させて、スーパースター達をハッピーにすれば問題もなくなるのだが。
かつてベロンが消え、あれだけマンチェスターに愛されたクリスチアーノ・ロナウドも、スペインの陽光を求めるようにマドリードへ移住した。
一年中、今にも泣き出しそうな曇り空が広がるマンチェスターの空の下、ファルカオはどうやって北イングランドの地方都市と共存し、現在の迷走するマンチェスター・Uのサッカーに融合するつもりなのだろうか。
金銭的な条件を優先しての移籍というイメージが強いことも相まって、『虎』の異名を持つコロンビア代表FWの将来にも、マンチェスターの暗雲が広がっていくようである。
【了】
森昌利●文 text by Masatoshi Mori