J1王者が見せつけられた“差” 川崎に局面の技術で完敗、横浜FM選手も痛感「相手が一枚上手」
【J番記者コラム】“神奈川ダービー”に1-3で完敗、随所に見え隠れした横浜FMの敗因
スタメン表を見て、目を疑った人がいたかもしれない。
首位を快走する川崎フロンターレとの一戦で、横浜F・マリノスは昨季のJリーグMVP&得点王のFW仲川輝人をベンチスタートにした。さらに主将のMF喜田拓也、今夏に加入して左ウイングの先発に定着しつつあったFW前田大然も同様に控えに回る。もともと先発をローテーションさせながら負傷を予防してきた経緯はあるものの、首位を走るチームに待ったをかける布陣としては少々驚きを隠せなかった。
横浜FMは3日前のルヴァンカップ準々決勝で北海道コンサドーレ札幌と戦い、PK戦にもつれ込む激闘を制した。しかしその試合で仲川はフル出場し、喜田は後半アディショナルタイムまでプレーしている。準決勝進出の代償として、主力選手のプレータイムをコントロールできなかった。
一方、川崎も同じ日程でヴィッセル神戸と対戦していたが、臨戦過程は大きく異なる。前半だけで3点をリードした川崎は、後半に入ってから主力選手を順番に交代させ、横浜FMと対戦する週末のリーグ戦に早くから備えていった。心身ともに余力を残すことができたというわけだ。
対戦相手も状況も違うので一概に比較できないが、準備段階の差は少なからずあったかもしれない。試合前の時点でチーム総走行距離の1試合平均が120kmを超えていた横浜FMだったが、この試合では112km台にとどまった。ポゼッションで後手に回ったという事情があるとはいえ、物足りない数字であることは間違いない。
もっとも横浜FMの敗因は、コンディションとは別の形でも見え隠れした。先制ゴールを決めたMFマルコス・ジュニオールが、「今日に限って言うと、フロンターレのほうが上手だった。チーム全体で連係が取れていて、いいプレーだった」と振り返ったように、随所に川崎の良さが光ったゲームでもある。
プレッシャーをプレッシャーに感じなければ、それはフリーとほぼ同義だ。横浜FMはもちろん、この試合でもハイプレッシャーをかけていったが、川崎の選手たちにいとも簡単にいなされる。MF天野純はM・ジュニオール同様に「技術的な部分は相手のほうが一枚上手だった」と完敗を認めた。
藤井雅彦
ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。