私が「朝鮮」と「在日」を背負う理由 在日女子サッカー界のパイオニアが掲げる”使命”
同じ在日朝鮮人3世のバックグラウンドを持つ元Jリーガーの安英学氏から刺激
李誠雅はこれまで多くの人に支えられて人生を歩んできた。朝鮮学校の先生や友人にはじまり、高校時代に朝鮮へ行った際には栃木SCのFW韓勇太(ハン・ヨンテ)、昨季までFC琉球に所属していたMF金成純(キム・ソンスン)が一緒に現地へ渡り、およそ2週間をともに過ごした。そして進学した日体大のチームメートやスタッフらと同様に熱心にサポートしてくれたのが、かつてJリーガーとしても活躍した元朝鮮民主主義人民共和国代表MF安英学(アン・ヨンハ)氏だ。日本で生まれ育った在日朝鮮人3世という同じバックグラウンドを持ち、44年ぶり2度目の出場となった2010年の南アフリカ・ワールドカップのピッチに立った英雄は、彼女にとって勇気をもらえる存在だった。
「私が言うのもおこがましいですけど、大学1年生の時から食事に連れて行ってくださったり、相談に乗ってくださって、いろんなサポートをして頂いています。ヨンハさんの魂、メンタリティーは本当に凄くて尊敬しています。日本の在日コリアン、祖国の朝鮮、韓国とも触れ合える偉大な存在です。私もヨンハさんみたいに引退しても同胞社会のため、同胞サッカー界のために、力になれることがあればやっていきたいと思います」
偉大な先輩と自身を重ね合わせるかのように、李誠雅は在日朝鮮人としての宿命を背負って戦う覚悟を強く口にする。
「在日朝鮮人という存在からして、本当は孤独なのかもしれません。私は祖国を愛していて、もちろん(祖国から)今も愛をもらっていますけど、それだけじゃ足りなくて、活躍して平壌や朝鮮の人たちに『李誠雅』という名前と顔も覚えてもらわないといけない。私は祖国の国旗を胸に、在日同胞の希望や期待を背負って生きています。だからこそ隠れられないし、いつどんな環境でも恥ずかしいことはできません。在日朝鮮人という特有な存在だからこそ、強く意識する部分だと思います。朝鮮本国の人たちは朝鮮という国しか背負えない反面、私は朝鮮と在日の両方を背負える。それは時にプレッシャーかもしれないけど、ポジティブアスキングで自分のパワーに変換できます」