日本人元Jリーガーが南米ペルーで奮闘 “コロナ禍”のリーグ再開「同部屋の選手も陽性に…」

室内でトレーニングする様子【写真提供:デポルティボ・ムニシパル】
室内でトレーニングする様子【写真提供:デポルティボ・ムニシパル】

プロスポーツで再開したのはサッカーのみ「経済再生の起爆剤としての期待がある」

 その後、感染者は8選手に増えたが、全員が無症状。感染した選手たちは施設内で隔離されていたが、練習にも参加できず、安静にしなければならないため、一部の選手は自宅に帰宅した。陽性となった選手と同部屋だった濃厚接触者となる選手たちも部屋をまとめられ、練習での接触プレーは禁止となった。食事の時間もずらすなど、感染拡大防止措置が取られた。

「僕の同部屋の選手も陽性になったので、自分も濃厚接触者組になったのですが、食事の際の皿も別のものによそってもらわなければいけなかった。ウエートトレーニングの際も、1人使うたびに器具を消毒していました。感染した選手たちは誰一人、症状がある選手がいなかったので、『本当に感染しているの?』という感じでした」

 感染者は現在、3人まで減少。選手たちは8月中旬以降、自宅から練習場に通っているが、車のない選手にはチームが市内を循環する選手用のバスを用意し、感染のリスクがある公共交通機関を使わなくてもいいようにしているという。試合前日にはホテルに泊まるが、食事の時も食堂には集まらず、各部屋で食べるスタイルが取られている。

 ペルーでは、リーグを再開することになったプロスポーツはサッカーだけ。ムニシパルだけでなく、他の5つ以上のチームでも感染者が出ているなかでの再開幕だった。他のスポーツ界からは批判の声も挙がったが、政府の肝いりで再開への道を突き進んだという。

「なんでサッカーだけなんだという声もあるんですが、試合がテレビで放送されるし、お金も生まれるから国の経済にも影響してくる。経済再生の起爆剤としての期待があるようです。また、自粛生活を続けている国民のガス抜きになるようにとの狙いもあると思います」

 国民がテレビで試合を観戦できるようにと、各節2〜3日にわたって日程が組まれており、それぞれの試合開始時間も重ならないよう、2時間おきにずらす形が取られている。そのため、平日の午前11時開始という試合もある。

 まだ、国内の状況は決して芳しくはない。3月15日に発令された国家緊急事態令は5カ月が経った今も続いており、夜間外出禁止、日曜の終日外出禁止措置が続いている。国境も閉まったままだ。

 それでも、5月18日からは、それまで一切の外出が禁じられていた14歳の子供たちの精神面を考慮し、自宅から500メートル以内の距離で30分以内の散歩が認められるようになった。澤はペルー人の妻、2人の子供とともに暮らしており、子供との散歩が日課に加わった。

 ショッピングセンターや大型店舗、商店街などは6月22日に再開。7月15日からは、感染者の多い一部の州を除き、州境を越えての移動が可能になり、飛行機の国内線や長距離バスも、マスクとフェイスシールドの着用を義務付け、運行が再開された。また、オンラインでの授業が続いている私立の多くの学校では、保護者の要望を受け、授業料が値下げされた。通常約1カ月ある冬休み(南半球のため7、8月に冬休みが設定されている)も2週間に短縮されたという。

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