「三歩進んで二歩下がる」清水の苦悩 リーグ最多タイ“24失点”の拙守を克服できるか
横浜FC戦の3失点目に見えた守備面の課題
試合を決められてしまった3失点目が、まさにその象徴だった。
前々節の湘南ベルマーレ戦でも、そのスピードを生かしたドリブルから得点を決めている横浜FCの松尾に対して、DF岡崎慎が簡単に振り切られた。松尾は「7、8割のドリブルをしていたら相手が食いついてきた」と、あのシーンを振り返っている。岡崎は松尾のドリブルが少し大きくなったところを狙いに行き、想像以上のスピードに驚愕することになったが、他の選手のカバーリングはどうだったのか。スカウティングにより、松尾のスピードには要注意ということはチームとして認識されていたはずだが……。
第9節の北海道コンサドーレ札幌戦(3-1)での勝利で、昨年の0-8のリベンジを果たし、第10節のベガルタ仙台戦で今シーズン初の無失点試合を経験し自信を得た。そして第11節の横浜FM戦では敗戦の中でも掴んだ手応えが、この第12節の横浜FC戦の結果でまた振り出しに戻ってしまったように受け止められ、「清水は今シーズン、降格がなくて良かったね」と揶揄する声も聞こえてくる。
クラモフスキー監督や今の選手たちが知っているかは分からないが、昭和の歌謡曲の「三歩進んで二歩下がる」の歌詞が今の清水には当てはまると感じている。今シーズンの残り試合はまだ22試合もある。一歩ずつ確実に前に進んでいくチームの姿を見せるには、十分な時間が残っている。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。