バイエルンの“組み立て”は現代の戦術的傾向を象徴 前線への配球はまるで「アメフト」
特別な個人技を有するPSG、現在のトレンドに対抗するのに相応しい
高いラインの裏を一発のパスで狙うのは可能だ。実際、バイエルンが失点しそうになるのはそういう形が多く、現在の戦術の弱点と言える。だがアラバ、アルフォンソ・デイヴィスのスピードは傑出していて、ジェローム・ボアテングには高さがありロングボールをカットできるので、構造的な弱点は実際にはそれほど弱点になっていない。
昨季のリバプールを少し洗練させたバイエルンは、現在の戦術的な流れを象徴するチームと言える。
一方のPSGはより技巧的で、ネイマール、キリアン・ムバッペというバイエルンにはない特別な個人技を有している。ロングボール&ハイプレスという現在のトレンドに対抗するのに相応しく、PSGが勝っても納得感はありそうだ。
対照的なカラーの2チームによるファイナルは興味深い。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。