南野拓実が挑むリバプール“最強3トップ”の牙城 チャンスは「早くて再来年」の理由

リバプールのユルゲン・クロップ監督【写真:AP】
リバプールのユルゲン・クロップ監督【写真:AP】

クロップは頭の中で、世代交代のイメージをしっかりと描いている

 ただしフィルミーノとはいえ、その選手生命が永遠に続くことはない。どこであのブラジル人が下降線を迎えるのか、それは断言できない。しかし、3歳年下の南野がリバプールで鍛えられ、選手としてしっかりと上昇気流に乗れば、いずれはフィルミーノと入れ替わるのが必然であり、クロップは頭の中でその世代交代のイメージをしっかりと描いているはずだ。

 だからこそ、現在の絶妙なバランスを誇るチームを壊すような補強はしない。クロップは今夏もスーパースター補強は「ない」と答える一方、トレント・アレクサンダー=アーノルドに続けとばかりに、19歳DFネコ・ウィリアムズや同じく19歳のMFカーティス・ジョーンズ、さらには17歳FWハーヴェイ・エリオットなどの10代選手をユースから引き上げ、トップチームでも積極的に起用し、南野以降のもっと遠い将来まで見据えている。

 筆者はそんなクロップの忍耐力と謙虚さを土台とした長期的な展望のなか、南野の最初のチャンスは早くても再来年だと考える。それも南野が来季を通じて、控えとして与えられたチャンスをしっかりとものにし、着実にイングランドで通用する力を蓄えることが条件だ。

 南野も当然、そんなことは自覚している。

「今のチームはできてしまっているし、その中で出られないことを、別にしようがないというわけじゃないけど、それは覚悟で来たんで、はい。そんな中で今日みたいな試合で、どれだけチャンスをつかめるのかだと思っています」

 これは1月23日のウォルバーハンプトン戦後のコメントだ。前半32分にマネが負傷退場すると、クロップはすかさず南野を投入した。試合は1-1の状態が続き、後半39分にフィルミーノの決勝ゴールで勝ち越した。これはそんなギリギリの試合を戦った直後の言葉であり、非常に感銘を受けた。

 南野は焦っていない。どんなチームに入ってきたのかということも正確に把握し、自分がポンとレギュラーになるという幻想も抱いていない。

 今後はただただ謙虚に、忍耐強く、世界のトップクラスのアタッカーと将来のレギュラーポジションをかけて競り合う毎日を重ねていくだけだ。

 我々はそんなふうに最高峰に挑む日本代表アタッカーを、本人に負けないくらいの忍耐力と謙虚さを持って、しかも大いなる期待は失わずに見守るしかない。そして近い将来、クロップが引き抜いた決断が正しかったと証明されると同時に、我々日本人サッカーファンのエールが後押しして、上昇気流に乗った南野が今の3トップを追い越す存在となり、欧州最強にしてイングランド最強にも返り咲いたリバプールの主軸となる日が来るのを、信じて待つのみである。

(森 昌利 / Masatoshi Mori)



森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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